家庭菜園奮闘記 その31

                                                          大雪後の菜園

 

 大雪でしばらくは菜園に近づけない日々が続いていましたが、ようやく見に行けるほどになりました。 おそるおそる見にいったら、こんなことになっていました。

 

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 電気柵は柵線が切れたり泥に埋まったり、支柱が倒れたり、かなりめちゃめちゃです。 雪が解けたら修理にかからねばなりません。 電気柵が壊れていても、猪は近づいた様子はありません。 今年の大雪で猪は半減したのではないかと思っています。 足の短い猪は、大雪が苦手なのです。

 

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  春菊ほうれん草の覆いをした透明シートは無事のようです。 全体はつぶされて低くなっていますが、空間はちゃんとありますので、中の野菜は無事に育っています。

 

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   白菜は雪が降る前に固く結球したものだけ収穫し、新聞紙に包んで保管をして順次食しているのですが、結球が悪くて収穫しなかったものは畑に残しています、 雪の中から顔を出したものはやがて芯から花芽を出してきます。 この花芽は、若いうちに菜の花として収穫します。 白菜の菜の花はあくが少なく淡白で、最高の高級おひたしになります。

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  雪の下からいちごも顔を出しました。 大雪の下にいても、元気そうです。 また、4月下旬からおいしい苺がいただけそうです。

 

 春が近づくとわくわくしますね。 今年も元気で菜園に通いたいと思っています。

開発人生記 その6

                開発失敗例

  成功した開発例をいくつか紹介いたしましたが、もちろん資金を投じて開発したが全く稼げなかった失敗例もいくつもあります。 今回はその中の2例を紹介したいと思います。

 

失敗例-1 クレーンチェンジショベル

 この開発は、クローラークレーンでも到達しにくいような急傾斜地の上や下で搬入路を作らずにクレーンを設置するために、油圧ショベルでクレーン部分のみを使用場所まで運び、当該油圧ショベルにそのクレーン部分を取り付けて、油圧ショベルをクレーンとして使用するものです。 

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 搬入道路を作らずに荷を作業現場に降ろしたい短期の工事に役立つだろうと思って開発しました。 開発には半年ほどの期間と百数十万円の開発費を投入しましたが、ついに1回も使用することが有りませんでした。 失敗の理由は次のようなことであろうと思います。

  • 自社で頻繁に使用する用途が無かった
  • 用途開発をするための宣伝能力が無かった
  • 吊り上げ能力制限等の法令対処が十分でなく、微妙にグレーな部分があった。

  この失敗から学ぶことは、思い付きで開発しても実使用まで持っていける力が無ければ、世に出せないということでした。 新商品は、まず自分で使ってみて利用メリットが大きいことを確認する必要があるので、自社で頻繁に使いたいという現場の声が有るか、他社からこんな機械が欲しいというニーズがあるものでないと、開発倒れになる可能性が高いということでした。

 

失敗例-2 地盤改良バケット

 地盤改良で多い表層改良というのは、表層地盤の土とセメントを撹拌混合し、表層を均したあと転圧して表層を強化するものです。 主として油圧ショベルバケットで撹拌するのですが、撹拌するときはバケットに爪が付いていた方が作業性がいいのですが、表層を均すときは爪が無い方が作業性がいいのです。 

 そこで、運転席で操作することによりバケットの爪をかくすことが出来るバケットを開発しようと考え、作ったのが下のバケットです。 

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 このバケットは4~5回使ってみましたが、次第にだれも使わなくなってしまいました。 その原因は下記のようなことでした。

  • バケット重量が重くて作業しづらい。(爪を隠す機能の機材分の重量が増えた)
  • 均し作業をすると各作動部に少しづつガタが有るので爪を隠す板が少し下がり、きれいに均せず微妙に線がつく
  • バケット交換は慣れると10分程度で出来るので、専用の撹拌バケットと幅広の爪無しバケットを交換して施工した方が能率がいい

ということで、この開発品には二百万円以上の開発費を投じたのですが、あえなくお蔵入りからスクラップ処理となってしまいました。

 この失敗から学ぶことは、今までの作業手順を変えるための開発は、今までより大幅に省力化出来てだれでも使いたくなるようでないとだめだということです。 このバケットであれば、従来より明らかに早くきれいな作業が出来るという革新性がないと使用するオペレーターは使ってくれないということが分かりました。 開発したこのバケットには、そこまでの革新性が無かったのです。

開発人生記 その5

                            無散水融雪コストダウンを目指した開発

 

 北陸は35年ぶりの大雪で、大変でしたね。 私はほぼ家にこもっていたので、大きな苦労は無かったのですが、車で立往生に巻き込まれた人は、大変お疲れ様でした。

 

 今回は時期に合わせて、融雪技術開発のお話を書きたいと思います。

  家にこもっていても、買い物には出かけなければならないので、家の入口や前面道路の除雪は皆、苦労したことと思います。 

 こんなこともあろうかと、私の家は玄関から道路までのアプローチと車庫前は「無散水融雪」を装備しています。 下の写真は我が家の入口です。 一晩の降雪が20cm以内程度であれば、このように無散水融雪施工個所は完全に溶けています

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  無散水融雪とは、北陸の道路で一般的にみられる小さなノズルから地下水を噴出させて雪を溶かすのではなく、予め舗装内部に一定の細かいピッチで曲げた1本の鋼管を埋め込んで置き、これに地下水を流して舗装を温めることにより表面の雪を溶かすもので、散水融雪にはない数々のメリットが有ります。 しかし、初期費用が散水融雪の5倍程度と高額なため、普及が進んでいませんでした。 

 散水融雪は毎年シーズン前にノズルの清掃や調整、不良ノズルの交換などのコストがかかりますが、無散水は地表面に出ているものが無いためメンテナンスフリーです。 従って、20年使うことを考えれば、初期費用が2倍以内であれば十分に競争力が有るであろうと考え、コストダウンに取り組む研究を始めました。 

 

研究―1 鋼管太さの選定

我が家の無散水融雪は30年ほど前に施工したもので、当時はあまり研究しないで施工したので、鋼管40Aを使用していました。 鋼管は太いほどコストが増しますし、舗装厚さも厚くする必要が出てくるので、コストダウンのためには鋼管を細くする必要があります。 いろいろな文献や放熱量計算の専門書等を読み、鋼管径20Aもしくは25Aで充分効果を発揮できると考え、この2つのサイズを採用することにしました。

 

研究―2 配管効率の研究(送戻交互配管方式採用)

 北陸の地下水温は概ね15℃~16℃程度ですが、これを無散水配管に送り込んで雪を溶かすと、次第に管内水温は下がっていきます。 個人宅の配管程度の長さであればあまり問題にならないのですが、配管が長くなると末端に近いところは水温が10℃程度まで下がることもあります。 こうなると、溶け易いところと溶けにくいところが出てきますので、私は下図のように配管を工夫しました。

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  右側のような配管とすれば、広い範囲の融雪でも、全体を平均的に溶かすことが出来ます。 ただ、こうすると曲げ部分は大曲小曲2種類の曲げ部材が必要となります。

 

研究―3 曲げ部材のコストダウン

 前述で、2種類の曲げ部材が必要だと書きましたが、コスト計算をするとこの曲げ部材の購入価格が高価で、無散水配管のコスト高の元凶の一つだということが分かってきました。 そこで、この部材コストを下げるべく、自社生産を考えました。 

 パイプをU字型に曲げるのは、技術的難易度がかなり高いのです。 普通に曲げればパイプはつぶれて、折れたような曲がり方をします。 こうならないように曲げるには、鋼管の丸い形が変形しないように金型で拘束して曲げるのです。 どのように拘束すれば丸い形を保ったまま曲げることが出来るか、いろいろな型を作り、試行錯誤してほぼ丸を保ったまま曲げることが出来るようになりました。 

 また、完全なU字型に曲げるのも工夫が要ります。 鉄は型に入れて曲げても、型を外すと少しもとに戻ってV字型になろうとします(スプリングバックといいます)。 これを見込んで少し余計目に曲げ、戻ったらちょうどU字になるような、2段曲げ機構を開発しました。 これらの技術は要点を特許申請致しました。

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  この機械は、予め調整して決められた長さのパイプをセットして油圧で押せば、1回で所定の形に曲げることが出来、曲げにかかる時間は数秒です。 

 曲げ部材を購入すれば2000円程度ですが、材料費のみなら400円程度で済みます。 曲げ費用を100円みても曲げ部材のコストを1/4にできました。

 

研究―4 管接手部のコストダウン

 直管と曲げ部材や長い直線部などは管を継ぎ手でつなぐ必要があります。 曲げが多いので継ぎ手も大量に使います。 通常は付き合わせ管はLAという両端にゴムシールが入った継ぎ手を使うのですが、これが20Aで500円25Aだと700円程度します。 しかもLAの外径管外径2倍ほどあるため、コンクリート被りを一定距離取ろうとすれば、コンクリート厚さ厚くなってコストも上がります。

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 この高価なLAを使わずに、薄い鋼管ソケット接着接合できないかと考えました。 

 20Aと25Aの外径よりわずかに大きい内径の薄肉パイプを探しましたが、鋼材問屋ではわからなかったので、NETでいろいろな規格を調べました。 

 配管用鋼管の規格では見つからなかったのですが、機械構造用の鋼管であれば寸法規格の種類が多くあることが分かりました。 しかし、規格に有っても受注生産品が多く、一般流通品はメーカーによって様々なことが分かったので、希望寸法のものを生産しているか、メーカーに問い合わせた結果、何とか希望に近いものの販売ルートを見つけました。 

 このパイプを10cm程度の長さに切り、ソケットとして管をつないでいくのですが、水漏れなくつなぐには接着剤固化シールする必要があります。

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 最初は、自社でよく使っている金属用接着剤を塗ってつけてみましたが、隙間に入った接着剤は何日たっても固まらず、水圧をかけると簡単に抜けてしまいます。 何種類か試しましたが、どれも固まりません。

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 仕方なく大手の接着剤メーカーに電話して、このような状態で使える接着剤を推奨してほしいと話し、接着剤サンプル無償提供していただきました。 これを使って試験したところ、24時間で固化し完全に接着できました。 

 接着した後水圧をかけても、漏れは全くありません。  

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  この方法でコスト計算したところ、ソケット用鋼管は1個当たり20A用で80円25A用で90円程度です。 接着剤のコストを加えても100円以下となりました。 組付け時間はLAを締め付ける時間とほぼ同じですから、組付けコストは変わりません。 1か所あたりのコストを1/5~1/7とするのに成功しました。 ソケット肉厚が2mmですから外径もそれほど大きくならず、コンクリート厚さに対する影響も有りません。 大成功です!

 

研究―5 パイプ切断コストの削減

 一現場の配管を作るには、曲げ部材や直線部長さ調整等、沢山の管を計算長さに切断しなければなりません。 自社で切断する機械は高速カッターというもので、これで切ると端面にバリがでて、これをグラインダー等で削り取る必要が出てきます。 この手間を加えると1か所切断時間は3分程度かかります。 1時間に20か所程度となります。 1時間あたりの自社職人コストを2000円とすれば1か所あたり100円かかります。 これに機械損料・切断刃消耗費・電気代等を50円みると1か所150円程度となります。 

 これを、自社切断ではなく切ってもバリのでない鋸盤やバンドソーを持っている専門業者に頼むこととし、価格交渉した結果平均1か所あたり90円程度となりました。 若干のコストダウンが出来たうえ、自社職人はほかの仕事に振り向けることが出来ます。

 

 これらの工夫を積み上げた結果、散水融雪の5倍程度といわれていた無散水融雪の初期コストを目標の2倍以下程度まで下げることが出来ました。 

 

 この開発は3年前の豪雪直前に完成し、12月にマスコミリリースした結果多くの新聞に掲載されました。 その後大雪となり、融雪技術に注目が集まったため、KNBの「エブリイ」というテレビ番組でも紹介され、私も出演させていただきました。 テレビの影響力はものすごく、その後多くの引き合いを頂きました。

 

 これに加えて、個人宅では浅井戸を提案して、井戸コストを含めた融雪提案を行いました。浅井戸というのは、表層水が浸透して概ね20m程度より浅い砂層に滞留している地下水を浅井戸ポンプでくみ上げて利用するため、低コストでの井水利用が可能です。 

 無散水融雪技術開発よりもかなり前から、この浅井戸を掘削する独自技術を開発して展開していたので、今回は2つの技術を組み合わせて展開するようにしたのです。 私が開発した浅井戸は次図のような手順で掘削・築造します。

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  一般に個人宅のような小さな敷地では、家が建ってしまうと井戸掘削のスペースが取れないため、住宅建築前でないと井戸は作れませんが、この浅井戸は前面道路から車載クレーンのアームを伸ばして掘削できるため、1㎡程度の余裕敷地が有れば築造可能です。 このため、この技術を開発以来、富山県内では6m~20m程度の浅井戸を無数に掘ってきました。 

 ただ、地下に水のある地層が無ければ掘っても水は出ません。 私の経験によれば、県内で浅井戸を掘って水が出る地域は、概ね次図のような範囲です。

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 この図の赤塗り部分であれば、確率80%程度で浅井戸が作れます。 この範囲外でも局所的には作れる場所もありますが、限定的です。 

 当社技術のような小径の低コスト井戸ではなく、600mm~1200mm程度の大口径浅井戸(胴型井戸や掘り抜き井戸とも呼ばれます)であれば、山のふもとの多くの地区で井戸が作れますが、コストは格段に高くなります。

 

 この技術での施工例を、雪が降った状況で紹介します。

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 大雪が降った場合、散水融雪では均等に溶けず、溶けない島ができ更に積もると島同士が連結し、融雪水はトンネル内を流れることとなって、その上にどんどん積もり、結局除雪車を入れることとなります。 

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 散水融雪では、上記写真のようになるとその後水を出し続けても溶けることは無く、機械もしくは人力での除雪作業となります。 散水で道路の雪がよく溶けるのは、車が雪を乱して融雪水と混ぜるから、島が出来ずよく溶けるのです。

 これに対し、無散水融雪では舗装全体が温められるため、水を送り続ければいずれ雪は全部溶けてしまいます。 また、溶けた後融雪外の邪魔な雪を融雪面にまき散らしておけばすぐに溶けていきます。

 

 「のど元過ぎれば熱さを忘れる」と言われるように、春になると大雪のことを忘れてしまうのが人の常ですが、かなり安価となったこの融雪工法を多くの人が採用すれば、次回の大雪パニックは大きく軽減されることでしょう。

開発人生記 その4

 前回はドイツ・ミュンヘンのバウマ展見学までを記載しましたが、今回は国内で機械を導入し、営業活動を行ったお話です。 利益率の高い新しい仕事を創り出しても、時代が変わると消滅していく典型的な工法となりました。

 

     グルンドドリル工法の導入~プッシュプル工法の開発(後編)

 

 この工法(グルンドドリル工法)は面白いと思い、近隣自治体を回ってヒアリングを開始したところ、富山県では水道本管にポリエチレン管を全く使っておらず、ダクタイル鋳鉄管を使っていました。 この管は1本4m乃至5mの管をシール付きのソケット部に差し込み、繋いでいく構造です。 これでは引っ張ると抜けてしまいますので、グルンドドリル工法では施工できません。 

 ところが、お隣の石川県では水道本管にポリエチレン管を使っているのです。 そこで、石川県で営業活動をしたところ、H市やN市で数件仕事を頂きました。 また、富山県のT市ではポリエチレン管は使っていませんがポリエチレン管をさや管として、中にダクタイル鋳鉄管を挿入する形で発注がありました。 

 これらの仕事を最初は伊藤忠建機のデモ機を借りて施工していましたが、翌年3月、ついにGD65型グルンドドリル施工機を思い切って購入しました。 価格は3500万円くらいだったと思います。 当時の年商が6億円程度ですから、かなり思い切った投資です。 

 投資をしたら、回収のために仕事を増やさねばなりません。 発注の可能性がある地方自治体(市町村)、水道事業体、ガス事業体を北は新潟県新潟市から南は福井県小浜市まで資料を抱えて営業に回りました。 しかし、いかに低コストで仕事が速いといっても、全く新しい工法なのでおいそれとは仕事を発注いただけません。 一か月に一工事くらいの受注ペースですから、機械の稼働率も低く、遊んでいることが多い状況でした。 

 最大の原因は地元富山県では水道管がポリエチレンで無いため、水道管の敷設工事受注が少ないためだと考えました。 そこで、富山県で使っているダクタイル鋳鉄管をこの機械で敷設できる方法を検討しました。 

 調べるとダクタイル鋳鉄管にもいろんな型があり、当時メインで使っていたのはK型ですが地震対策の耐震管NS型というのがあり、K型より高価ですが地震対策のために一部で使われ始めていることが分かりました。 

 この管は管接続部を一度つなぐと抜け止めが付いているため抜けません。 これなら、引っ張ることが出来ます。 ただし、接続部分は地震の時動いて地震動を吸収する構造のため十数センチ動くような耐震間隙を作ってあります。 設置時は間隙の中央に先端部を置くようにしなければなりませんが、引っ張って施工すれば管は最も伸びた状態となってしまいます。 そこで私は、押せば間隙の中央部に止まるようなリングを作り「推進力伝達リング」と名付けました。 このリングはボルト2本で固く締め付けてあるためゆっくり押してもずれませんが、地震時のような大きな衝撃が加わるとずれるのです。 

 まず引っ張って全管を敷設した後、後ろからゆっくりと押せば耐震間隙を確保できます。 この方式でやってみようと管を後ろから押すジャッキを製作し、営業活動を行って受注した案件で施工を行ったところ非常にうまくいきました。 当初のグルンドドリル工法とは少し形が変わったので、これを「プッシュプル工法」と名付けました。

  

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 初回のプッシュプル工法が大変うまくいったので、自信をもって営業活動を行ったところ、いくつかの仕事を受注することが出来ました。 ところが、粘性土土質で施工しているうちは非常にうまくいくのですが、砂質土土質になると引っ張てもなかなか管が進みません。 鋳鉄管は管接続部のソケットが管体部よりかなり太いため、この部分が砂に引っかかってなかなか進まないのです。 粘性土施工より何倍も施工時間がかかる上、最大の力を長時間かけるため品質低下の可能性もあります。 「砂質土は出来ません」では仕事の量が大幅に少なくなります。 

 思案した挙句、このNS型ダクタイル鋳鉄管の形状を変えて、全体を最も太いソケットの太さに合わせて均一な太さのストレートな管とすれば砂が引っかからなくなり、スムーズに引っ張れるだろうと考えました。 そこで、この管を作っているメーカーを調べたところ、日本で最も多く作っているのはクボタでした。 クボタは農業機械で有名ですが、水道管も作っているのです。 

 クボタの鋳鉄管事業部の営業所が金沢にありましたので、電話でアポをとり、訪問してNS型ダクタイル鋳鉄管ストレートな推進管を作れないかという相談を持ち掛けました。 クボタの反応は散々で「この管は土の中を推進する管ではない、引っ張ると傷が付き耐久性に影響する」などと、当社の施工方法を否定する話ばかりでした。 私は、「傷が心配なら傷がつかないような管を開発すればいいだろう、全く新しいことをやりたがらない連中だな」と腹を立てながら帰ってきました。 

 ところが、それから約3ヶ月後、ストレートな管を作る構想をあきらめかけていた頃、突然クボタから「先日あなたが提案した管を、クボタの新商品として作ってみようという話になったので、協力してもらえますか」という電話がかかってきました。 当時、クボタはいろいろな事情から新商品開発に力を入れ始めており、大阪支店管内の会議の際、「新商品のアイデアは無いか」と強く言われていたらしいのです。 そこで苦し紛れに「ダクタイル鋳鉄管の推進管を作れないかと言ってきた業者がいる」と言ったところ、「それは面白い、やってみよう」となったらしいのです。 

 私にとっては、渡りに船で協力を惜しむ理由はありません。 今度はクボタの技術者が図面をもって当社に打ち合わせのため来社され、形状や施工法等、仕様を決めました。 

 3ヶ月後位には製品の形が出来るとのことで、先ずは営業に先立ち、実績を創ろうとなりました。 私はクボタに対して「初回この管を無償提供してほしい、無償ならすぐに施工現場を作ってもらえると思う」と言って初回無償の許可をもらい、T市水道局を訪問し、「管材料費を無償で施工するから、推進工法に適した現場でこの管を使った設計を組んでほしい」とお願いに行きました。 自治体にとって水道事業というのは重要なインフラ事業ですが、独立採算は大変厳しく万年予算不足です。 そこに高価なNSダクタイル鋳鉄管の材料費を無料で施工すると言ってきたのですから断る理由はありません。 早速、管更新計画が有る工区で新しい管を採用した設計を組んでいただきました。 結果、新タイプの管はまことにスムーズな施工が出来ました。 

 この工事で実績が出来たので営業をさらに活発化し、水道やガスで多くの施工を受注することが出来ました。 また、クボタの営業網で関東や東北の自治体でもこの推進管が採用されました。 当社は関東や東北には行けませんので、地場で機械を所有している業者が施工するのですが、最初は地場業者に不足している機材を当社から貸し出し、私が施工指導に訪問しました。 2回目からは地場業者だけで施工するのです。 全国でそこそこの施工実績が出来たようです。

しかし、そのうち時代が変わってきて、いろいろなところで規制緩和が始まりました。 土木の世界でも水道管やガス管は道路下に埋設する場合、原則土被り1.2mを確保することとなっていましたが、これが浅層埋設といって原則土被り0.6mでいいことになりました。 浅くなると開削による管埋設費用は格段に安くなります。 各自治体、事業体は工法別による費用比較をし、なるべく安い工法を選択しますので、浅層埋設が普及したとたん、当社の水道事業に対する推進工法採用は激減してしまいました。 このころには富山県下水道普及率80%を超えたため、下水道関連の推進工事・開削工事も減少の一途をたどっていました。 このころを境に、当社の主力工事上下水道関連から、以前から研究開発していた地盤改良関連へと大きく変わっていったのでした。 この地盤改良技術の開発は、改めてつぎの機会に紹介いたします。

開発人生記 その3

 今回紹介する開発にはかなり大きな時間的・資金的・精神的エネルギーを注ぎました。 国外の技術を導入し、それを地元で受け入れてもらえる形に開発しなおし、全く新しい顧客を開拓して事業化しました。 最終的にはこの事業での投下資金に対するリターンはわずかなものでしたが、当社の企業イメージ向上取引先拡大には大きく貢献し、後の新事業展開にも大きな力となったのです。 

 また、富山の零細企業が、日本中の人が知っているような大企業に提案しても、それが面白くて合理的であれば、採用される場合があることもわかりました。 行動する者だけが新しい扉を開くことが出来ることを確信できた開発活動でした。

 話が長くなるので、2回に分けて紹介いたします。 今回はドイツで管を引き込む推進機械を見つけるところまでです。 

 

    グルンドドリル工法の導入~プッシュプル工法の開発(前編)

 

 私が46歳のころ、会社に土木で使う締固めローラーのメーカーである日本ボーマクという会社の営業員と社長が訪ねてきました。 ボーマクとはドイツの路盤を転圧するローラーのメーカーで当時は振動ローラーでは世界のトップメーカーで、日本ボーマクはそこの日本法人です。 

  以前に書いたように私は建設業関連の業界にいて、建設機械販売レンタルも行っていたので、ボーマク社の製品も何台か所有し、時々販売もしていましたから来ていただいたのだと思います。 いろいろな話をして話が弾むうちに、来年4月頃にドイツ世界三大建機展の一つである「バウマ展」という展示会が有るので、日本ボーマクの社員や取引先を誘ってドイツボーマク社訪問・展示会見学・ドイツ観光を計画しているが、一緒に行きませんかとのお誘いを受けました。

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 当時、外国といえば社員旅行でアジアの各国には何度か行っていましたが、ヨーロッパにはいったことが無かったことと、世界中から最新の建設機械が集まる展示会はぜひ見たいと思い「ご一緒させてください」と即答しました。 翌年の1995年4月に十数名で、出入りを含めて8日間のドイツ旅行が催行されたのですが、誘っていただいた肝心の日本ボーマク社長は病気になって参加されませんでした。 

 

 「バウマ展」はうち2日間、ミュンヘン市の会場へ見に行ったのですが、先ずはその広さに圧倒されました。 当時、日本での建機展は幕張メッセや晴海ふ頭で開催されたものを数回見に行ったことが有るのですが、まったく違う規模の展示会に圧倒されました。 会場の端から端までただ歩くだけでも20分くらいかかるのです。 大型重機展示用の広大な屋外スペースと小物や部品展示用の屋内スペースがあり、3階建ての展示場が10棟くらいありました。 同行した人たちは殆ど半日ほどでミュンヘン市街の観光に行ってしまいましたが、展示物すべてを見たい私は2日間フルに会場を回りました。 場内には私が食べられるようなレストランや売店が殆どなかったため、1日目はフランクフルトを買って食べ、2日目はバナナを2本持参して会場へ行き、昼食時間も惜しんで食べながら見て回りました。 

 

 この展示会に行くに際して、新しい機械の開発をいつも考えていた私は、私の考えているいくつかの物がすでに開発されているかどうか、確認したいと思っていました。

 そのうちの一つは当時開発中のもので「開発人生記 その1」で紹介した「丸い竪穴を掘るバケット」で、もう一つは地中に配管を非開削で敷設する「推進工法」を「押す」のではなく「引っ張る」ようにしたものが無いかということでした。 

 「開発人生記 その2」で書いたように当時は富山県で下水道整備計画がスタートした直後で、下水道関連の仕事がどんどん増えていたので、私は省力化できる機械のアイデアをいくつも温めていました。 その中でも下水管を地中埋設する際に掘らないで押し込む「推進工法」はいろいろな会社が開発し提案していましたがいずれも工費がかなり高価であるので、私はもっとコストを安くして提案したいといろいろな工法とそれ用の機械を開発中でした。 

 当時私が開発し、提案した推進工法には「逆ぞりアーム簡易推進工法」(下記掲載 参考パンフ参照)、「サイレントパワー工法」(下記掲載 カタログ表紙参照)などがあり、いずれも低コストでしたが推進ですから管を押し込むのです。 しかし、押し込むより引っ張った方が管の方向制御が簡単であろうと常々考えていました。 

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  会場をくまなく歩いていた私は、ついにあるコーナーで、引っ張る推進機械を見つけたのです。 それは地中管埋設工法のコーナーで、ドイツやアメリカのメーカーがHDD工法(誘導式水平ボーリング工法)施工機を何台か出品していました。 

 HDD工法というのは、最初に先端に発信機の付いた細い鋼製ロッドを方向コントロールしながら地中に押し込み、所定の立て坑に到達させた後、そのロッドに埋設する管(主にポリエチレン管もしくは鋼管)をつないで引き込む工法です。 

 当時HDD工法は日本ではほとんど知られていませんでしたが、欧米ではメーカーが沢山あり、割とメジャーな工法だったのです。 その中で、ドイツラクトテクニク社が出品している「グルンドドリル」という機械がありました。 

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 しかも、トラクトテクニク社のコーナーにはなんと日本人説明者がいたのです。 伊藤忠建機がトラクトテクニク社の日本総代理店となり、この機械を日本で販売していくために、この展示会にも社員を派遣していたのです。 

 早速私はいろいろな説明をしてもらいましたが、近々この機械日本に輸入し、名古屋試験運転をするので見に来ませんかという話も頂きました。 私は是非とも見たいので、場所や日時を後日案内してもらうこととし、名刺交換して帰途に就きました。 私が探していた機械の一つが実際にあったわけで、ドイツまで見に来たかいがあったと思い、非常に喜んで帰ったものです。 

 翌月、東邦ガス社所有の名古屋グラウンドで施工試運転を行うという案内を頂きました。 当時は若かったので、出張は殆ど車で移動していました。 名古屋位なら日帰りです。 

 でも、見に行くのに車で一人で行くのは能がないと思い、興味を持ちそうな人を乗せていこうと思い立ち、T市の水道局を訪ねました。 このような機械で施工するのは富山県では水道管が最も多いだろうと考えたからです。 

 水道局を訪ね、こんな新しい工法に興味を持って下さるのはどなたかと聞いたところ、M氏を紹介されました。 M氏に話したところ、「是非見たい、有給休暇をとってでも一緒に見に行きます」とのこと。 M氏は上司に話したところ、「最新の工法の勉強であるから、業務として見に行ってよろしい」と出張許可が出ました。 当日は私の車でM氏と二人、朝早く出発し名古屋へ向かいました。 

 当日はグラウンドの端に小さな立て坑を掘り、そこからポリエチレン管を50mくらい引き込むのです。 ロッドの圧入50mで1時間くらい、φ100mmポリエチレン管引き込みで1時間くらい、その他の段取りで1時間くらいで合計3時間くらいでした。 50mを開削で施工すれば1.5日くらいかかるでしょうから非常にスピーディで、従来工法に比べてかなりコストダウンできるであろうということを確認し、帰途に就きました。

 

 今回はここまでで、次回はこの機械を導入しての営業活動や開発活動の進展・変遷等を紹介したいと思います。 

家庭菜園奮闘記 その30

                                                冬の準備(園芸編)

 

 12月初旬は暖かかったのに、急に寒気が来て真冬になってしまいましたね。 庭の鉢植えの中のハイビスカスが中旬まで最後の花を咲かせていました。

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 今日は、私がしているプランターの保温を紹介します。 市販でプランター用保温セットは販売されていますが、自宅にあるもので保温できます。

 

 まず、60cm~70cm位の長さの針金状のものを用意します。 私は鉢植えを買ってきたときに付いている針金支柱を再利用しています。 写真は胡蝶蘭の支柱同じ長さに切り揃えたものです。 

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  これを半円状に曲げます。

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 プランター等間隔で刺します。 この後、充分に水やりをしておけば春まで水やりは不要です。

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 透明シートをかぶせます。 私は菜園用に透明シートを買ってきているので、それを使いますが、大きな包装用の透明シートが有れば、それの再利用で構いません。

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  きちんと巻いて完成です。  

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 写真のプランターパンジーです。 パンジーは保温しなくても冬越し出来ますが、保温しておくと冬でも育つので、春早く咲き始めます。 写真のパンジーを蒔いて芽出しさせたものなので、買ってきたものほど大きくなっていませんが、保温しておくと春には買ってきたものに追いつきます。 こんな簡単な保温で冬越し出来ないものも出来るようになる場合もあります。 春一番の花が楽しみです。

家庭菜園奮闘記 その29

                                                              冬の準備

 

 先日から季節外れの暖かさ(暑さ?)が続いていましたが、もうすぐ本格的な冬ですね。 今年は去年のような暖冬にはならず、平年並みの予想ですがどうなるでしょうか。 いずれにしても菜園は粛々と冬の準備来春の準備を進めなければなりません。 

 我が菜園も着々と準備が進んでいます。 現在の畑の状況をお見せします。

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  今ある作物は写真左から いちご、白菜、大根、にんにく、らっきょう、たまねぎ、ネギです。 白菜、大根は春までに全部収穫します。 他は7月初旬までには順次収穫していきます。

 

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 たまねぎ苗は以前書いたようにホームセンターから買ってきたのですが、活着しなかったところに補充するために、私は百円ショップで買ってきた種を蒔いています。 今年は紫たまねぎが7~8本虫に食べられたので、種から育てた苗を補充しました。 買ってきたものより小さいのですが、収穫時にはそこそこ大きくなります。

 アスパラは写真のように大きく茂っています。 もうすぐ枯れてしまうので、地上部は刈り取ってしまい、来春芽が出てくるのを楽しみに待ちます。

 

 

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  冬の葉野菜透明シートで覆いをすれば冬でも元気に育ちます。 写真は春菊ホウレンソウの覆いです。 こんな簡単な覆いで充分です。

 

 

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  夏・秋野菜のトマト、ナス、ピーマンなどもすべて撤去しました。 里芋も先日全部収穫しました。 このあとに鶏糞・油粕・苦土石灰・もみ殻を施し、小さな耕運機で耕しました。 そこに畝を作りマルチシートをかけてあります。 更に畝間は防草シートを敷き詰めてあります。 これで、来春は畑地に雑草が生えず、種や苗を植え付けることに専念できます。 来春の最初はジャガイモの植え付けから始まります。