令和の日本列島改造論 その3

                                              国土全体の生産性を考える

 日本はいよいよ人口減少時代に突入し、昨年の出生数は90万人を大きく割り込んだといわれています。 それに加えて人口の大都市集中で田舎は過疎化し、休耕田や耕作放棄地が激増、山林は荒れ放題、土地境界も不明となっているばかりか、所有者さえも不明な土地が激増中です。 昨年9月19日に公開した当ブログのタイトル「政治家は、日本の未来を語れ」内に「田舎の崩壊を防げ」と題して記述してありますが、日本の田舎の崩壊は激しく、このまま放置すれば日本の国土はどうなってしまうのかと思うほど、危機的状況にあります。 富山県の山村であれば、里山はジャングル化したため野生動物がはびこり、猪は民家近くの田畑まで掘り返し、法面は穴だらけです。 住宅地と森林との間の里山がなくなったため、熊も民家近くに出没しています。

 このままでは、日本の国土の利用は都市部のみとなり、全国民共通の財産である国土全体からの利用収益は半減してしまうと思われます。

 この状況を改善し、国民の財産である国土を有効に利用し、国全体を豊かにするために今回の提案を行いたいと思う。

提案① 田舎改革の立法措置を急げ!
 田舎の改革はもう待ったなしの状況まで来ています。 そしてその改革の出発点は立法措置以外にありません。 それでは、どのような立法措置が改革に有効なのでしょうか。 田舎の問題点は、土地の生産性は低いが所有者は多いため、個人での努力では採算をとることが困難になっていることです。 広大な土地であれば、知恵を出せばコスト低減が可能になり、事業として成り立つようになるのです。このことから、私は次のような施策が必要であると考えています。

現行法でも有効利用できている地域(都市部)と有効利用できそうもない地域(田舎)とを明確に区分し、田舎に特化した土地利用に関する法律を制定。

所有者が有効利用できる人は所有権を残し、それ以外は国が土地を接収する法律を制定する。 所有権を残した土地も、開発に障害となる場合は等価交換や接収を容易にする条件とする。

国が接収した土地を民間企業に貸与もしくは売却するための基準を作り、法律を整備する。


提案② 大企業に田舎の広大な土地利用をマネジメントさせよ!
 法律が整備されれば、大企業に貸与もしくは売却するのですが、大企業は主にマネジメントを行い、いろいろな企業に得意分野の部署を委託または経営させるのです。 そんなことをする大企業がいるの? と思っている人は、時代認識が相当遅れています。 これからのグローバル企業は環境貢献が生き残りのための必須要件です。 田舎の広大な土地には環境貢献の種が無限に広がっているのです。 それでは、どのような利用ができるのでしょうか。 まずは田舎の土地を森林部、里山部、農地部と分けて利用することを考えてみましょう。

 ① 森林部は木材業、パルプ製造業、燃料ペレット製造業、薪炭製造業、キャンプ場、キノコ生産業等が考えられる。 活用にあたっては、水源地森林を残し、伐採と植林や自然再生を組み合わせた再生可能サイクルを構築し、土地形状や地域特性、気候や土質等を勘案し得意分野がある企業に得意分野を任せ、土地全体を利用企画する。

 ② 里山は果樹園や畜産・牧畜を主体とする。 飲用水源地以外の地域であれば畜産業が可能であり、閉鎖区域とすることで1か所で伝染病などが発生しても他の地域に伝播することは少なく、機械化された中規模施設運営のノウハウを蓄積した専業者が1社で10施設程度を運営することでコストダウンと全滅リスクの軽減を達成できると思う。 里山整備はまた、人間と野生動物の分離にも、大きく貢献する。 日本の高品質で安全な果物や肉類は、どんどん増加する新興国富裕層に対しての需要を満たすようになるでしょう。

 ③ 農地部であれば米麦をはじめ、野菜や果樹、畜産や園芸等、いろいろなものが考えられる。 一定以上の広さがあれば、生産と観光を組み合わせて付加価値を高めることも可能となる。 これも、1業者で数か所経営となれば、業者の規模によるコスト削減や地域による天候不順リスクの軽減も期待できる。

 ④ 施設運営のエネルギーは、敷地内にソーラー発電所または水力発電を設置し、施設はその電気で運営する。 今や、電力会社からの買電価格よりソーラーによる発電の方がコストは有利である。 また、送電経路も短くなる。 電池価格がこれから急激にさがるので、電池併用とすれば外部電源なしも可能となる。 これもまた、運営コスト削減と環境貢献を両立できる。

 都市開発のノウハウを持つ民間企業が沢山あるように、田舎の開発も法制度の変革を行い、このような知恵を出せば動く大企業は多いと考えられる。 立法を担当する政府や国会議員は、田舎の開発は票にならないと放置することなく、国家100年の大計を企画し、まずは土地利用法制の素案作りから進めていただきたいと思う。