地球環境の提案(その5)

                                               中国沙漠緑化のお話(続き)

 

 地球環境の提案(その4)に続いて、中国沙漠緑化のお話です。 前回はクブチ沙漠でのことを書いたのですが、もう少し続けます。

 クブチ沙漠では新疆ポプラを植林したことは前回書きましたが、育っているのはポプラのみで自然林のような多様性のある植生とはなっていません。 このような単一植生では、例えば害虫やウイルスなどが発生すると全滅し元の沙漠に戻るリスクがあります。 森林が永続するには、多様性が必要なのです。 
 多様性とは植生のみならず生態系すべてを含むもので、林が出来たら落葉に腐朽菌が住みつき、表層に腐葉土ができ、その中にミミズやダンゴムシ、カブトムシやコガネムシの幼虫が住み、それを狙って他の昆虫や鳥類、小型哺乳類が集まるなど、食物連鎖が出来上がるのです。 この永続性を創るには、かの地に生育可能な様々な草や木が育つことが必要で、これから人為的に多様な種の導入等を繰り返しても安定して豊かな自然が出来上がるのには数百年を要することでしょう。 

 前にも書いたように土の中には水分があるので、木々が根を張ると地中水分を葉より空気中に蒸散させます。 蒸散により空中湿度が上昇し、温度差により上昇気流が発生すると雲ができ雨が降るのです。 雨が降り表層湿度が上昇すると土壌微生物は活発に活動・繁殖し、より多くの植物・昆虫・小動物を育むのです。 この状態まで持っていければ、林は自然林となり、人が介在しなくても自然に植物の更新が行われるようになり、うまくいくと自然林の拡大まで期待できるようになるでしょう。 

 広大な自然林があり、経常的に雨が降ると川ができます。 沙漠にも大雨が降ると川ができるのですが、保水力がないため雨が止むとたちまち川は干上がってしまいます。 森林は樹木自身が相当保水し、落ち葉腐葉土が大きな保水力を持ち、枝葉表層日射を防ぐため表土からの蒸発が少なくなり、結果降った雨はゆっくりと下方に向かって進んでいくため、川という絶え間ない流れを作ることが出来るのです。 大森林を再生計画なしで伐採することは、CО2削減に逆行するばかりでなく、水源量を減らし、洪水の危険性を高め、雨量さえ減らすことにも繋がりかねないのです。 世界にはこのような理論を理解せず、いたるところで無計画伐採が行われ、沙漠化も進行しています。 日本はこのような伐採を防ぐ方向で開発援助を行い、違法伐採の木材や違法伐採地での生産物の輸入をやめなければならないと思います。

次回は黄土高原での植林のお話です。