企業経営のお話 その3

                                     絶対につぶれない会社を創る

  当ブログのスタート「ブログ初挑戦」で書いたように、私は「いくつかの会社を創業し成長させる努力をしてきました」が、私が目指したのは会社を大きくすることではなく「絶対につぶれない会社」にすることでした。 

 非常に憶病小心者の私は、会社が順調に成長しているときも「いつか仕事が全く来なくなる時が来るかもしれない」「不渡り手形をもらい資金不足になるかもしれない」などと、いつも不安を抱えていました。 この不安を払しょくするためにも猛烈に働いたのですが、働いて稼いでも税金を払い終わると、手元に現金が残らず、銀行借り入れがどんどん増えることが分かってきました。 特に、仕事量が増えて人員を増やし、設備投資もどんどんしなければならない時期には、税金を払うために多額の借り入れをしなければならないようになったのです。 

 多くの中小企業創業者は同じような経験をすると思います。 これを克服し、「絶対につぶれない会社」を目指して、私が取り入れた手法を紹介したいと思います。

 

全員が働く会社を作る

 まず、基本は社員全員が働いて、全員で稼ぐ会社とすることです。 全員が働くようにするためには、まず社長が率先して働く姿を見せなければ、社員が働くはずがありません。

 創業期から十数年は自分でも現場に出ていましたから、最も過酷汚れる現場は自分が担当しました。 朝はまずトイレ掃除からスタートです。 他人がいやがる仕事社長が率先してやっていれば、社長の指示に異を唱える従業員はいなくなります。 

 

人材に投資 ―――― 報酬増と教育

 そのうえで、従業員の報酬は世間相場より多くするのです。 報酬を多くしても、それ以上に稼ぐ人材にすればいいわけで、そのために研修にも力を入れました。 研修は仕事をするための考え方を学ぶ「思考研修」と実務を学ぶ「職能研修」がありますが、「思考研修」には一定の基準以上の人は外部の集合研修に全員派遣しました。 かなりな費用が掛かりましたが、会社の雰囲気が変わりました。 「職能研修」は、「営業」にかかわることは外部研修で、「技能」にかかわることは自社研修要領を作り毎年「技能検定試験」を実施し、合格者には手当をつけることとしました。 若手はこの試験合格を目指し「自主練習」をするようになりました。 

 こうすることで増やした報酬よりも数倍稼ぐ人材が育ちます。 やる気のない人はこの雰囲気についてこれないのでやめていき、自然淘汰が進むので全員が学び続ける雰囲気が出来上がるのです。 

 

技術開発(商品開発)を怠らない

 技術力で成長している会社と営業力で成長している会社があるようですが、いかに営業力が有っても自社に競合他社と「差別化」できるツールが全くなければ、強い営業力も機能しません。 圧倒的な技術力があれば口コミでも業容は拡大していくものですが、加えて強い営業力が有れば会社は一気に成長します。 会社を強くする基本は差別化できる技術開発(商品開発)ですが、新技術(新商品)も時の流れで陳腐化し新技術ではなくなります。 常に次の新技術開発し続ける仕組みを備えることがつぶれない強い会社の条件です。 

 当ブログ「開発人生記」で、私の土木建設業界での新技術開発を紹介してありますが、どのような業界でも技術開発は可能です。 例えばお饅頭屋さんだとすれば、十年一日の如く同じ饅頭だけを作り続けるのではなく、時代に合わせて甘さ・辛さ・色彩を変える、餡の滑らかさを工夫する、利用シチュエーションを想定して誕生日用・入学祝用・還暦祝い用等いろいろな形状のものを提案するなど、顧客ニーズを探る開発はいろいろできると思います。 これが出来ている企業が永続し成長する強い企業なのです。

 

事業の柱を複数つくる

 以前日本企業の中で「選択と集中」という考え方で事業の柱を絞ることが流行りましたが、絞りすぎて「1本足打法」になることは、企業にとって大変危険です。 社会情勢は刻々変化しており、どんな優秀な経営者でも未来を間違わずに見通すことは不可能です。 事業の柱複数あれば、経営者の意図せぬ環境変化で一つの事業が不調となっても、他の事業に注力することによりカバーできることが多いものです。 

 先のお饅頭屋さんの例であれば、饅頭販売が大変儲かる時代に多店舗展開ばかりしていれば、顧客の嗜好が饅頭から離れた時の打撃は大きいものになります。 饅頭製造の技術を利用して洋菓子を開発し、洋菓子店の展開も少し行っていれば嗜好の変化に対応しやすい企業体質になります。 大きく儲かる時代には、店舗を作るとき1階を自社店舗とし、2階以上を貸事務所マンションとすれば、不動産賃貸という事業の柱が加わります。 不動産賃貸に習熟すれば、饅頭屋から撤退したいと思えば、自社店舗も貸店舗とすることが出来ます。 

 現在主力の事業をますます強くすることはもちろん大変大切ですが、このように環境変化に機敏に変化して対応できる体質が「つぶれない企業」の条件なのです。 そして、その事業の作り方は、現在の事業と相関があり設備・技術・人材などを利転用できる方が成功確率が上がります。

 私は創業当初、建設機械の修理業から入り、機械のレンタル販売と広げていきました。 機械を沢山保有するようになると、オペレーター付きの要望が出てきたのでその要望に応えると、更に進んで土木の請負の要望も出てきました。 その要望にも応えるために人材を採用許認可を取得しました。 土木の請負をすると、受注金額が大きいので事業の主力が次第にそちらに移行していきました。 この増やした人材で当時増加しつつあった下水道管埋設工事主力に受注を拡大していったのです。 この過程では他の事業も残しつつ、新しい事業を試行し、人材や利益率等を勘案して伸ばせる方向へ事業の中心を移行していった訳で、このようなやりかたがリスクが少なくスムーズな拡大が出来ます。 

 要は、新しい顧客ニーズがあったとき「当社はそれはやっていません」と断る会社にならず、やってみて事業を広げていく体質の会社にすることが肝要です。

 

未来に稼ぐ投資で節税と含み資産増加

 企業が順調に成長しだすと、経営者は税金の多さに驚かされます。 税金を払うことは企業が社会で生きていくうえで大変大切なことですが、何も考えずに税金を払っているとなかなか企業体力が強くなりません。 「未来に稼ぐものに投資」することが節税となり、企業体力を強くします。 未来に稼ぐものとはどんなものがあるかを例示します。

製造設備更新・新設する。 増産とコスト削減を目指して新しい設備を導入すれば税額控除特別償却などで節税でき、キャッシュフローを改善出来る上、来期以降の利益を押し上げることが出来る。

遊休不動産賃貸物件とする。(例えば駐車場、アパート、マンション、貸店舗)

賃貸用不動産を取得する。(償却が大きくて投資利回りの大きい物件であればキャッシュフローを改善できる) 土地は償却できないので、投資をするとキャッシュフローが悪くなります。 土地のみに対する投資はやめて、出来るだけ実価値の減少よりも償却額が大きいものに投資することが、含み資産を大きくし会社の体力を強くします。

太陽光発電などの安定収益を期待でき、償却額が大きい商品に投資する。 太陽光発電所は償却期間が17年であるが、もっと長期に亘って収入が期待できる。

レンタル商品に投資する。 自分の事業と関連のある商品をレンタルすることで安定収入が得られる場合があります。 例えば介護業界であれば、介護用品のレンタルなどがあります。 私は建設業界にいたので、建設機械や建設用仮設資材のレンタル部門を作りました。 償却が大きく取れるが実価値はそれほど減価しないので含み資産が大きくなり、会社の体力強化に大きく貢献しました。

 

保険商品で節税と含み資産増加

 会社で規定を作り、一定基準の従業員全員を対象に保険に入ると掛け金の半額が経費となる商品があります。 解約すると掛け金が戻ってくるのですが、金利水準が下がった現在では掛けた金額100%ではなく少し減額されますが、従業員が入院した際などには保険金が給付されますので福利厚生として役立ちます。 保険金は従業員に払われるのですが、会社にどうしてもお金が必要になった場合に、解約すれば会社に返戻金が戻ります。 私は従業員の退職金に充てるため、役職や勤続年数を考慮して毎年の掛け金を決めていました。 長年勤務すると退職金も中小企業にとっては負担になる額になりますが、保険で長年積み立てておけば解約返戻金退職金に変わるだけで一時の大きな負担が無くなり、会社の損益を傷めることもありません。 今回のコロナ騒動のような緊急時売り上げが大きく減少したような時には解約し、現金を手にすることもできます。

 

 いろいろと書いてきましたが、まとめれば「変化を恐れず変革を続ける企業体質」とこれをバックアップする豊富な「流動資産と含み資産」を持つことです。 多くの人がこれを理解し、目指して経営していったなら、日本に100年企業がもっともっと増えることでしょう。