開発人生記 その6

                開発失敗例

  成功した開発例をいくつか紹介いたしましたが、もちろん資金を投じて開発したが全く稼げなかった失敗例もいくつもあります。 今回はその中の2例を紹介したいと思います。

 

失敗例-1 クレーンチェンジショベル

 この開発は、クローラークレーンでも到達しにくいような急傾斜地の上や下で搬入路を作らずにクレーンを設置するために、油圧ショベルでクレーン部分のみを使用場所まで運び、当該油圧ショベルにそのクレーン部分を取り付けて、油圧ショベルをクレーンとして使用するものです。 

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 搬入道路を作らずに荷を作業現場に降ろしたい短期の工事に役立つだろうと思って開発しました。 開発には半年ほどの期間と百数十万円の開発費を投入しましたが、ついに1回も使用することが有りませんでした。 失敗の理由は次のようなことであろうと思います。

  • 自社で頻繁に使用する用途が無かった
  • 用途開発をするための宣伝能力が無かった
  • 吊り上げ能力制限等の法令対処が十分でなく、微妙にグレーな部分があった。

  この失敗から学ぶことは、思い付きで開発しても実使用まで持っていける力が無ければ、世に出せないということでした。 新商品は、まず自分で使ってみて利用メリットが大きいことを確認する必要があるので、自社で頻繁に使いたいという現場の声が有るか、他社からこんな機械が欲しいというニーズがあるものでないと、開発倒れになる可能性が高いということでした。

 

失敗例-2 地盤改良バケット

 地盤改良で多い表層改良というのは、表層地盤の土とセメントを撹拌混合し、表層を均したあと転圧して表層を強化するものです。 主として油圧ショベルバケットで撹拌するのですが、撹拌するときはバケットに爪が付いていた方が作業性がいいのですが、表層を均すときは爪が無い方が作業性がいいのです。 

 そこで、運転席で操作することによりバケットの爪をかくすことが出来るバケットを開発しようと考え、作ったのが下のバケットです。 

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 このバケットは4~5回使ってみましたが、次第にだれも使わなくなってしまいました。 その原因は下記のようなことでした。

  • バケット重量が重くて作業しづらい。(爪を隠す機能の機材分の重量が増えた)
  • 均し作業をすると各作動部に少しづつガタが有るので爪を隠す板が少し下がり、きれいに均せず微妙に線がつく
  • バケット交換は慣れると10分程度で出来るので、専用の撹拌バケットと幅広の爪無しバケットを交換して施工した方が能率がいい

ということで、この開発品には二百万円以上の開発費を投じたのですが、あえなくお蔵入りからスクラップ処理となってしまいました。

 この失敗から学ぶことは、今までの作業手順を変えるための開発は、今までより大幅に省力化出来てだれでも使いたくなるようでないとだめだということです。 このバケットであれば、従来より明らかに早くきれいな作業が出来るという革新性がないと使用するオペレーターは使ってくれないということが分かりました。 開発したこのバケットには、そこまでの革新性が無かったのです。