令和の日本列島改造論 その21

富山県半導体産業誘致を!

 

 自由貿易の流れが席巻した20世紀末~21世紀初頭から一変し、世界の安保情勢が緊迫化する中、世界の経済もブロック化がますます進行するものと考えられ、経済安保の面からもあらゆる産業がブロック内で分散配置されるようになると考えられる。

 特に先端技術である半導体産業は、民主主義陣営内で台湾と韓国で微細化技術が高度化した工場集積が進んだが、権威主義国家の侵略リスクと自国先端産業育成のため各国は自国生産方向に動き出しており、日本でも熊本県に台湾TSMCの技術による工場、宮城県に同PSMCの技術による工場誘致が進んでいるようだ。 すでに一部が完成した熊本のTSMC工場周辺はバブルのように沸き立っているようだ。 

 しかし同じ場所に大規模工場をどんどん増設すれば、災害による停止の経済的影響が甚大となる他いろいろな歪も発生するのが常である。 持続可能性を追求するのであれば、若干のコスト増を覚悟して巨大工場の集積ではなく中~大規模工場の分散配置が望ましい。

 どのような問題が発生するのかと言えば、先ずは人材不足による人件費高騰用地不足による地価高騰住居不足による家賃高騰工業用水不足排水による汚染問題交通渋滞通勤インフラ不足電力不足通信容量不足等々、数え上げればきりがない程であろう。 そして産業というのは永遠に続くものではなく、栄枯盛衰は世の常である。 巨大であればあるほど撤退した際の当該地区の衝撃は大きく、破壊的な地区衰退をもたらすのである。

 これが中規模工場の分散配置であれば、産業というのは無くなるのではなくて入れ替わるのであるから新しく勃興して成長期にある産業に少しずつ変換していくことが可能になるのである。

 こういった意味でも、ここ十数年はAI関連に牽引されて成長を続けるであろう半導体産業を中心とした先端技術産業を富山県でも誘致を計画し、行政は行動を起こすべきであろう。 

 富山県は先般の能登地震では液状化による被害を受けたが、もともと地盤が強固で大きな断層も少なく台風の襲来も少ない低災害リスク県と言われている。 加えて県東部地区は平地でも地盤が比較的強固で、立山連峰を背にしているので年間を通じて水不足の懸念が無く、良質な地下水も豊富な地区が多い。 地下水を利用できるということは表面水を使うときに必要な浄水施設送水施設に対する投資が不要となり水に関する維持管理コスト極少となるから行政にとっても工場側にとっても大きなメリットとなる。 

 おりしも富山県では多い時に112万人いた県民が今年100万人を下回ったということが報道された。 人口問題研究所の推計では2050年の推計人口は76万2000人となっている。 人口減少は深刻であり県東部では上市町、朝日町、入善町消滅可能性都市に名を連ねている。 大きな企業誘致は世界中から人を集める最も確実な解決策の一つである。 

 誘致に乗り出すためにはどこに誘致するかの候補場所を選定し、先に示したようなメリット・デメリットを理解の上、数値に基づいた対策と予算措置を計画しなければならない。 

 例えば地下水利用は、候補地でどの程度の取水が可能で、周辺にどのような影響が有るかを調査し、不足するのであればどこでどの程度涵養できるかなどの推計値が必要である。

 行政が担うべきインフラ整備は、かなり綿密な可能性調査工期・予算等の検討が必要となろう。 また、人材に関しては県内住民のみで充足するわけはなく、今では世界中から人材を引き入れなければならないので、その居住教育、同化などの問題に細かく対応できるように予め計画しておかなければ、日本の政治家のお家芸「泥縄対策」に落ちいってしまうのです。

 

 日本の人口は東京一極集中が言われて久しいが、NET環境の進展や機器の進化で民間事業は地域格差を埋めることが出来る時代となっている。 このような先端工場を誘致できればその周辺には関連企業の集積も期待できる。 今から最も力を入れるべきAIに関する研究所などを、広々とした自然環境豊かな富山の地に誘致することが出来れば、この地が先端産業の発信地となることも出来るのです。 だめだと思って行動しないところに夢のような話は転がり込んできません。 夢に向かって行動するところだけが夢を実現することが出来るのです。