企業経営のお話 その4

                                                               不況対策

 長年会社経営をしていると、好調のときもあれば不調になる時もあります。 私は過去のブログでも書いたように、中小企業の経営をしていましたが、会社の営業形態は建設機械の修理や販売から始めて、次第に建設業主力になっていきました。 

 主力が建設業となったころは日本経済が拡大期で、自動車などをどんどん輸出拡大していた頃です。 輸出しすぎた結果アメリカとの貿易摩擦内需拡大を迫られ、下水道工事がどんどん発注されて仕事はいくらでもありました。 

 ところが、民主党政権に替る前後から建設業は大変な不況となり、大きな工事では業者間の値引き合戦(たたきあいと言いました)が日常茶飯事となり、どの業者も利益を出せず青息吐息の時代が続いたのです。

 この対策として、私が採ったのは「不動産を取得して、発注者になる」ことでした。 土地が有れば、例えば駐車場にする造成工事や舗装工事が発注できますし、建物が有ればリフォームや外構工事が発注できます。 自前で出来る土木工事は自分でやりますが、リフォームなどの建築工事は建築業者に発注します。 リフォーム工事を発注する見返りに、その会社が持っている土木工事をもらおうという作戦です。 

 手始めに中古のアパートを買って運営してみようと思い、アパート経営の本を買ってきて4冊も読んでみました。 3ヶ月ほど本で研究していましたが、やはり実践してみなければよくわからないと思い、富山市で鉄骨4階建て20室と木造2階建て6室のアパートを購入してみました。 

 物件は会社ではなく個人で取得することとしました。 当時の会社は公共工事も受注しており、毎年入札に参加するための条件である経営審査を受けていました。 不動産を取得して借入金を増やすと経営審査点数が下がるので会社所有とするのは思わしくないのです。 

 最初ですから物件価格の相場もわからず、不動産屋の言い値で買いましたので、少し高く買いすぎたように思います。 築25年~32年の物件でかなり古いものでした。 特に鉄骨4階建ての物件はリフォームが全くされておらず、入居者も半分ほどしかいなかった為、空き部屋に一部屋当たり150万円~250万円を投じてリフォームを行いました。 

 このリフォーム発注で建築会社数社と取引が始まり、またアパート管理をする会社不動産売買を行う会社とも取引が広がりました。 そのほかにも、プロパンガスを供給している会社インターネット接続業者解体業者配管業者エアコン取付業者塗装業者等に取引が広がっていきました。 

 それぞれの業者に土木の仕事を紹介していただけるようにお願いした結果、民間の土木工事がかなり安定的に受注できるようになりました。 民間工事の良いところは多くは工期が定まっていないことです。 自社や下請け業者が暇になったらひとつづつこなしていくことが出来ますので、利益率は低くても大きな工事間のロスタイム有効利用できるため、年間の稼働率を向上でき、結果利益率が向上するのです。 

 部屋のリフォームをする際は、リフォーム業者や入居仲介業者などに時代のトレンドを聞き、間取りや装備を充実していった結果、アパート経営はかなり資金効率の良い事業だということが分かってきました。

 その後も中古アパートをいくつも紹介されて購入していくこととなるのですが、融資を受けている銀行から「アパート経営用の会社を創ってほしい」と言われました。 銀行にすれば個人に対する融資の与信枠は大きくありません。 会社に対して融資し、社長が保証人になれば個人に対するよりも格段に大きな与信枠を設定できます。 かくして不況克服を目指して始めたアパート経営事業は「株式会社オリト」という新しい事業を行う会社を設立することにつながったのです。 

 不況だと言ってあきらめて手を打たなければ、新しい収益源を見つけることは出来ません。 不況対策を果敢に行った結果新しい仕事や人脈を生み出し、更にその後はこの会社で太陽光発電事業に対して大きな投資を行う新しい事業領域に進出することにも繋がっていくのです。