開発人生記 その17

新しい機械を開発したい人に向けて

 

 世の中には「こんな機械を作ったら面白い」と思っている人は沢山いると思う。 しかしそれを実際に作ってみる人はほんの一握りであろう。 ましてや、それを世に出してビジネスとして成功するのは非常に稀なことである。 しかしこれを成し遂げることは究極の「わくわく人生」を過ごし「人生の成功者」として世に認められることとなるので、思いを実現すべく挑戦する人が一人でも増えるように小生の経験をお伝えしたいと思う。

私の過去のブログ「開発人生記 その1」にも記したように、私は機械工学を学んで「特殊土木工事」を生業としていたので、土木工事用の様々な機械を開発して世に出してきました。 これらの経験から「是非こんな機械を作ってみたい」と思っている人や企業に向けて、「今まで世の中に無かった機械」の開発は、どんな手順で進めたら実現できるか、現実的な手順を紹介したい。

 

 最も簡単な手法は、自らの構想を手書きのポンチ絵みたいな形で示しただけで、図面化した上で製作できる能力が有る設計・製作会社を見つけることである。 街の鉄工所では簡単な構造のものであれば設計製作してくれるところはいくつか見つかると思う。 ポイントはその会社で構想を理解して図面化できる技術者が居るかどうかであろう。 

 物を作るにはいろいろな部品を作って組み合わせて完成するのであるが、一つの鉄工所ですべての部品を加工できるわけではなく、自分の会社で加工できないものは外注加工をしてもらうのであるが、その場合に図面は不可欠だからである。

 私が開発したものでいえば、以前に本ブログで紹介した「円筒バケットは鉄工所に設計製作してもらった例である。

    

 

 少し複雑な機械であったり、設計製作会社が見つからない場合は先ず機械設計会社を探して構想を図面化してもらい、その図面通りの物を作ってくれるところを探すのである。

 例えば、私が開発時に図面作成を依頼しているアクティブオフィス(ホームページ:active-office.co.jp)はアイデアを図面化してくれる機械設計会社です。

 図面が有れば製作だけを請け負う会社は多いので、探すのは比較的容易であろう。 過去に私が開発したもので言えば以前のブログ「開発人生記 その13」で紹介した「スーパーナロー工法の開発」がそれにあたります。 

   

 

 「開発人生記 その13」に「開発にはイデアを考える人、それを図面化する人、図面に基づいて製品を造る人が必要です」と書きましたが、まさにこれが開発の基本形なのです。 

 ただ、この図面化するにあたって詳細な専門知識を要する個所がかなり頻繁に表れてきます。 機械開発において機械構造以外で特に専門知識が必要な分野は電気的な制御部分油圧装置の部分です。 「スーパーナロー工法」は油圧作動部分が多い機械であったので「油圧装置」の設計に詳しい人を開発メンバーに加わっていただきました。

 

 更に高度な機械を開発するにはその道の専門家に参加をお願いする必要が有ります。 以前のブログ「開発人生記 その7」に書いた六脚の機械は現在も開発継続中ですが六脚の機械をスムーズに歩行させるのには相当高度な電子制御技術が必要です。 このため電子制御の専門家がメンバーに必要なので、以前に書いたように大学の先生にお願いして参加してもらっています。

 大学の先生は民間からの開発計画に参画を求められると自らの研究の一環として取り組んだり、学生の研究テーマとして教えながら学生に研究させたりして進め、この時必要になる資材の購入費などを大学に対する寄付として当方から提供するのです。 大学も学費や国の補助金以外の自主財源確保を要求されている時代なので、開発テーマをこなせる専門の先生が居れば協力してくれることが多いのです。

 このように機械の開発とは専門家の知見の結集をおこなうということなので、自らの人脈を総動員して専門家を探したり、自治体や大学又は国の開発支援機関などに相談したりして出来る体制を整えていくのです。 

 

 どんな開発でも開発が完了して市場投入できるまで当該事業で収入は無く、支出が有るのみです。 テーマによっては国や自治体からの助成金が受けられる場合もありますが一部助成が殆どであり、自己資金の確保は必須です。 従って全く新しい機械を開発したいとの思いを持っている人は先ず想定される開発費自己資金としてすでに持っているか、賛同してもらえるスポンサーに提供してもらえる人でなければ取り組みは困難であると思われます。 スポンサーを探すのには事業の有用性や優位性、開発のタイムスケジュールや開発後の事業計画策定など開発以外の諸事もこなす必要が有ります。 これらのことを毎日一歩ずつ根気よく進めることが出来る人だけが完成という到達点に立つことが出来るのです。 

 しかし、この楽しくも根気のいることに多くの人が挑戦することは個人の人間的成功にとどまらず、日本の知的財産を増やして産業を活性化し、国力の向上ひいては国民全体の幸福度向上につながるのです。