開発人生記 その15

            六脚機械開発の現状          

 

 「開発人生記 その7」では日本の林業やエネルギー事情の大改革を目指して「六脚歩行機械」の開発に着手したことを紹介いたしましたが、その後の進捗と現在状況をお知らせしたいと思います。 

 

 以前にも記載したように、日本の林業革命を起こし国産木材の低コスト化とともにエネルギーの自給率を大幅に高めようとする革新的な機械・工法を目指しています。 その林業での稼働イメージは下図のようなものでした。

   

         

 このような機械がなぜ必要か、どう使うのか、普及すると日本がどう変わるかということは当ブログ「令和の日本列島改造論 その11」「令和の日本列島改造論 その2」「令和の日本列島改造論 その9」「令和の日本列島改造論 その15」を順に読んでいただくと理解が早いと思います。 

 

 上記に記載したようなことを目指して開発を始めました。 この機械の上部作業体はウインチ装備を除けば類似のものがすでに林業機械として実用化されたものが多くあります。 従って開発するのは下部歩行部分となります。 

歩行制御のプログラム開発は長岡技術科学大学の梅本先生にお願いしたことは以前に書きましたが、この際は各脚の関節にサーボモーターを取り付けて作動させていました。 この時の実験機が次の写真です。

   

    

             梅本研究室の実験機                       

 

 一応実験室内では歩くようになったので、次に実用機の開発に移行しました。 実用機ではサーボモーターで動かすわけにはいかず油圧駆動にする必要があります。 各脚は油圧シリンダーにより作動するようになるのです。

 サーボモーターと違って油圧シリンダーは長さによりストロークに限界があるため、脚をコンパクトに設計することが難しいのです。 脚が不必要に長くなると重量や強度に問題が出ることや上部作業体の大きさにも制限が出てきます。 脚長必要最小限の長さに抑えるのが実用機設計のポイントとなります。 このため下記のような工夫を考えながら設計を進めています。

  • 脚は正六角形の配置とする。
  • 脚取付フレームは中心から各脚に向かって独立したフレームが突き出ている構造とする。 これにより各脚の水平方向の揺動シリンダーの取付けが容易となる。
  • 本体に近い第一脚の垂直揺動は揺動角が大きいため中間リンクを取り付け、テレスコシリンダー採用によりスペース不足に対応する。

 

 言葉で表現してもわかりにくいと思いますが、3D図面で表現すると下図のようになります。

                     

                                         六脚構造と油圧シリンダー配置図                   

 

 脚の大まかな構造が決まったら、これから歩行制御のため各シリンダーに位置センサー接地センサーを取り付け、制御バルブを配置していくこととなります。 この油圧回路設計や制御機器選定は油圧制御技術者に依頼して進めつつあります。

 このように開発はゆっくりとではありますが、毎日確実に一歩一歩前進しています。

 

 機械の開発と並行して、実用段階での集材工法も考えました。 

 「開発人生記 その7」でこの機械の上部作業体にはウインチ装備すると書きましたが、このウインチを複胴として2台載せます。 一方のウインチで大きなそりを引っ張るのです。 このそりに集材する材木を乗せるのです。 他方のウインチは空になったそりを集材箇所まで戻す作業に使用します。 その作業イメージは下図のような形となります。

 

  

              伐採木の集材イメージ                     

 

 このようなそりを牽引する方法であれば索道架設と違って設置に特別な技術や大きな労力を要しません。 そりを戻すときの反力は立木で十分です。 機械に装備するウインチのワイヤー巻取り量を大きくすれば1000m程度の牽引は可能でしょう。 条件が良ければ往復両ラインにそりを取り付けることも可能です。 そうすればより運搬効率が向上します。 

 搬出道路を造らないでの木材伐採・集材の夢に一歩一歩近づいています。