令和の日本列島改造論 その10

         森林利用計画を国家として取り組め!

 

開発人生記 その7」で日本の林業の大幅なコストダウンと広範な日本国土の有効利用を目指して「六脚走行機械」を開発していると記載しましたが、この機械が完成すれば今は搬出コストが高価すぎて利用できない山奥の木々まで利用可能となるため、輸入材国産材に代わり間伐材まですべて搬出できるようになるので、建材だけではなく国産バイオマス原料も劇的に増加することとなる。 

 政府は2,050年までにカーボンニュートラルと言っているが、多分に原発稼働を見込んでいるのであろう。 しかし、最後の始末が決まっていない原発をこれから新規に造るなどは論外であり、国民は決して許容しないであろう。 カーボンニュートラルに貢献する現在の技術で、安定電源として増加できる再生可能電源バイオマス発電が筆頭であると思う。 これが出来るかできないかは、ひとえに政府の決断にかかっている。

 「令和の日本列島改造論 その3」で記述したように、日本の山村・山林は危機的状況にある。 この根本原因は国の土地利用に関する無策にある。 国は日本の国土全体を有効利用し、国民に最大の幸福を提供する義務があるにもかかわらず、国土、特に山村・山林の利活用に関しては、全く無知・無策である。 国は国土全体の有効利用に関し、法整備も含め関与を深めていかねばならない。

 

 森林には国家を守る様々な機能が有る。 先ずはこの機能を最大限に生かすために、どのような機能が有るかを把握しておかねばならない。 森林には森林として存在するだけで水源としての涵養及び洪水防止流出調整機能CO2吸収機能多様な生物育成保護機能木材・燃料・食料・薬物供給機能等様々なものがあり、これから流れ出す川が海に注ぐことによって、そのミネラル等の栄養分海の生態系も豊かに育まれるのである。

 このような機能を持続的に最大限国民の利益になるように管理するには国家が全国的な視点で利活用をデザインする必要がある。 森林は放置すると次第に原生林となっていき、CO2吸収量も限定的となる。 森の木は切らないのが良いのではなく、人間が管理・利用できるところは植林~育成(下草刈り)~枝打ち~間伐~皆伐のサイクルを維持し、常に成長する森林を維持することがCO2削減に寄与するのである。 それでは、森林はどのような考え方で利活用のデザインをするべきなのでしょうか。

 

国が主導し国産材生産計画をたてる

 日本で必要とされる木材生産量はどの程度であるのか、将来にわたって推計し、生産計画を立てる必要がある。 建材として代表的な杉と檜を例にとれば、杉は植林から40年~60年、檜は60年~80年程度が主伐適期でしょう。 毎年一定量の供給が必要であれば杉であれば育成区画を50等分して毎年植林を繰り返せば、50年後からは毎年一定量の主伐が可能となるはずです。 樹種ごとに主伐適期は変わりますし、地域ごとに生産樹種も変わりますから、国が音頭を取って50年後や80年後の需要予測を立て、生産サイクルを確立するように導いていかねばなりません。 

 

原生林・雑木林・木材生産林の適正配置と管理を!

 建材となる木は杉や檜のような常緑針葉樹が多い。 森林の機能である水源としての涵養及び洪水防止流出調整機能、多様な生物育成保護機能などの自然環境を考えれば、落葉広葉樹林を残すことが必須となる。 

 森林を長期に放置すれば次第にその土地の環境に合ったブナやタブノキといった陰樹の極相林すなわち原生林となります。 原生林は水源地として広範囲で保全することが求められる場所がありますが、CO2吸収能力が限定的となるため、建材生産やバイオマス原料生産地とは区分する必要があります。 

 CO2吸収のためには若木を育て、それを建材や燃料として活用することが求められます。 里山ではコナラクヌギを中心とした雑木林が広がっている地区が多いが、薪炭需要が減少した現在は利用されず放置され、ジャングル化したところが多い。 雑木林は落葉樹が多いため腐葉土が厚くなり、水源機能洪水調整機能も大きく、動物の食料となる種子が実ることから多様な生物育成に貢献している。 

 もともと雑木林は先人が薪炭生産のために人的にクヌギやコナラを植林し管理されてきたものです。 クヌギやコナラは皆伐しても翌年にはひこばえが育ち始め、15年~20年で元の林に戻る。 30年以上の老木になると根の活性が損なわれてくるのでひこばえの発生が悪く、元の林に戻りにくくなる。 従って、この林を利用するには20年~25年間隔皆伐を繰り返すのが良いとされている。 皆伐後に生えるひこばえは大きい根が有るため成長が速く、しかも植林することなく利用できるので植林木に比べて低コストとなるから、バイオマス燃料に最適であろう。 当該林を25区画程度に分け、毎年1区画の皆伐を繰り返せば、毎年一定量バイオマス資源を供給できることになる。

 このように、森林の役割を理解したうえでその管理サイクルに基づき、適正配置と利用計画を全国網羅で策定できるのは、国家をおいて他にはない。 

 

原料供給にリンクした発電所建設を!

 前述のように、森林の配置を決め樹種が決まれば毎年生産される木材量が計算できる。 建材等で利用できるもの以外はバイオマス燃料とすれば、年間バイオマス燃料の供給可能量も計算できることとなる。 この供給量から計算された量を消費するバイオマス発電所を近隣で建設すれば、まさに地産地消再生可能エネルギーの電源が確保できることとなる。 産地近くでバイオマス発電所を設置し、得られたバイオマス原料を半炭化ペレットとすれば保管発電所での燃料融通も容易となるので、倒木被害などで原料供給が多くなった際は、生産を多くしても問題は生じない。 

 

太陽光発電と組み合わせて、安定電源化を!

 太陽光発電の弱点は太陽が見えなくなると発電しないことであるから、これをバイオマス発電と組み合わせれば安定電源とすることが出来る。 更に、近隣に風力発電水力発電があればこれとも連携し、仮想発電所技術でネットワーク化すれば大きな安定電源発電所とすることが出来る。 安定電源化すれば、CO2排出の多い石炭火力などの化石燃料発電を減らし、将来は全廃になるであろう原子力発電に替ることができるのである。