令和の日本列島改造論 その15

                                               国産エネルギーを開発せよ

 

 世界的に進みつつある脱炭素の流れで石炭・石油・天然ガスといった資源に対する投資が縮小し、一時的な不足状況が発生しているため高騰しており、日本経済にも悪影響が出ています。 日本はこの状況を乗り越え、国として発展していかねばなりませんが、日本のエネルギー調達政策脱炭素政策はどう進むのか全く方向が示されていません。 政治の無能ぶりは目を覆うばかりです。

 

 日本国内で調達できる国産エネルギーを増やし、10%しかないといわれている日本のエネルギー自給率を向上させることは日本の国力向上に不可欠のことですが国の方針は一貫性がなく、国民からは反対が多い原子力発電所に再び頼ろうとの動きも見え始めました。 後始末ができそうもない原子力発電所の新設など国民が賛成するはずもなく、また大金をはたいて将来の厄介者設備を作ることなど、税金の無駄遣い以外の何物でもありません。 それでは、日本のエネルギー自給率向上はどのように進めるべきなのでしょうか。

 

 一つの解は、国産木材(国産植物材)低コスト化利用技術の開発に有ります。  日本の国土面積を考えれば山地の未利用木間伐材街路樹公園樹屋敷林果樹木まですべての伐採したものの枝葉製材くずまで利用することを考えれば、化石燃料に頼らずとも十分なエネルギー量が有ります。  

 日本の発電や製鉄に用いられる石炭輸入量1億8000万トン程度ですが、森林における木材資源備蓄量60億㎥以上あるといわれています。 これは木材として利用できる量ですから燃料として利用できる枝葉細い部分雑木枯れ木まで利用し、荒れ地に植林して森林を増やすことにより燃料として利用できる資源量ははるかに多くなると考えられます。 

 加えて先に述べた街路樹、公園樹、屋敷林、果樹木まですべて利用できる体制を整えれば、利用可能量はまだまだ大きくできるのです。 特に街路樹、公園樹、屋敷林などの剪定枝や伐採木などは厄介者扱いで大きな費用をかけて処分している現状ですが、これを資源化することにより処分の行政コストも大きく低下するのです。 加えて解体により発生する廃木材も分別しチップ化やペレット化して利用するのです。 要はこれらを資源として収集・加工エネルギー化する技術開発インフラ整備です。

 

 収穫した木材等をエネルギーとして利用する方法はいろいろあります。 現況のインフラも利用できるように、いろいろな技術を開発すべきです。 

 最も簡単な方法は直接燃焼です。 チップペレットにしたものを燃焼させそのエネルギーを利用します。 また、直接燃焼ではなく蒸し焼きにしてガス化し、このガスを改質して燃焼させタービンを回して発電する方法もあります。 この方法は専用の設備と材料の貯蔵設備を備えたところでのみ利用可能で、最も多く使いそうなのはバイオマス発電所でしょう。 

 木材等を乾留によりガス液体固体に分けて利用する方法もあります。 木材を加熱するとまずガスが発生し、同時に木酢液タールが液体として出てきます。 最後に炭素分がとして残ります。 炭焼きの原理ですが現在の炭焼きではガス分や液体部分はほぼ捨てています。 これを技術開発で、取り出したガス天然ガスの代替とし木酢液タール分化学原料・製薬原料・肥料原料とするのです。  残った炭素分発電燃料に使用できます。 

 更に炭を製鉄用コークスとして使える品質に高める技術を確立すれば今、製鉄時に出るCO2の問題で苦境に陥っている高炉を再び胸を張って使えるようになります。

 微生物による発酵メタンガスに変えて利用する方法もあります。 枝葉などの密度が低い材料は発酵によるガス化のほうが適しているかもしれません。

 これらの方法でエネルギーを調達できるようになれば日本の自前エネルギーが大幅に増え、10%しかないといわれている日本のエネルギー自給率を向上させることができます。 しかも森林のエネルギーは管理さえ適正に行えば毎年成長してくれますから使っても減ることがないのです。 

 前記のことが実現するために最大の障害がエネルギーの元となる国産木材(国産植物材)低コスト調達です。 日本の森林はほとんどが農地として利用しにくい傾斜地です。 このため欧米やロシアのような大規模機械化林業が採用しづらく、搬出道路築造コストも格段に高くなります。 結果搬出コストを加えると国産材より輸入材のほうが低コストとなるため、輸入材が過半な状況に陥っているのです。

 当ブログ「令和の日本列島改造論 その11」で六脚の歩行機械搬出コストを劇的に低下させる提案を書きましたが、この機械が完成して搬出コストが下がり輸入材よりも国産材の価格が安価となれば、日本の山地にある木は国産無尽蔵再生可能エネルギーへと変わるのです。 

 現在日本でもバイオマス発電所がいくつか稼働を始めましたが多くは輸入バイオマスを燃料にしているようです。 輸入バイオマス輸出国の環境破壊につながっているという批判や輸送にかかるCO2排出の問題もあり、国産バイオマスを使用しなければなりません。 国産バイオマス使用の発電所で日本の電気の大半を生み出す事ができた時、日本のエネルギー安保盤石のものとなるのです。 
 今までのような泥縄政策でなく、50年、100年先を見据えた日本政府の本気の取り組みを期待したいものです。