前回は菜園の話を書きましたので、植物つながりで今日はあすなろ（ヒノキ科あすなろ属の常緑針葉樹）のお話です。 以前に「雑草に学ぶ企業経営」というタイトルで書いたものは、雑草の逞しさから学ぶお話でしたが、今回は植林した苗木から学ぶお話です。
あすなろに学ぶ
ーーーーーあなたは太陽になれるか－－－－－－
私の生家は氷見市の山間地にあります。築100年超(多分？)の古民家で、裏山は杉やあすなろの林、竹林等となっています。今は誰も住んでいないのですが、仏壇もあり、父母の法要もここでとり行う為、今でもそこそこのメンテナンスをしています。
20年程前、裏山の上を通っている県道がくずれ落ち、裏山の一部をのみ込んで、土石流となって家の横を通って下の道までふさいでしまいました。土石流が通った林には樹齢200年超の一抱え半程もあるあすなろが十数本ありましたが、数本は土砂に押し倒され、残った木も県道復旧工事で林に重機を入れての作業の為に、伐採してしまいました。工事終了後、数年は放置してありましたが、先人が見事に育てたあすなろ林を復旧したくなり、15年程前（もっと前かも）に森林組合からあすなろ苗を30本程購入、植林しました。
植林後は、雪に倒されないように鉄棒の支柱をしました。毎年春にはまっすぐ育つように、支柱にひもで誘導し直しています。 幼少の頃はまっすぐ育つように誘導しないとまっすぐ育たないのは人と同じです。その後、毎年2～3回林の草刈を行った結果、20本程は活着し、成長を続けています。残念ながら毎年数本は枯れていったので、枯れたところには杉や檜も植えてみました。最初に植えたあすなろは、大きなものでは高さ2.5ｍ程にもなっています。
平均的に育ったものは1.5ｍ～2ｍ程で、十数本はこの程度の大きさになっています。
木の陰などで環境の悪いところは、枯れたものが多いのですが、なんとか少しずつがんばって成長しているものもあります。けれども、これは1ｍもありません。
最初に植えたあすなろが枯れてしまったので、再度植えようと思いましたが、その年はあすなろ苗が手に入らなかったので、檜苗を数本植えてみました。何本かは枯れてしまいましたが、成長しているものは、あすなろよりはるかに成長が速く、あすなろより4～5年遅れて植えたにもかかわらず、しかも、あすなろが育たなかった程環境が良くないところにもかかわらず、既にあすなろを追い越して、樹高は3mを超えたものもあります。
本来、最初に植えた森林組合販売のあすなろ苗は挿し木というクローン苗で育てたもので、その持っているDNAは全く同じものであるはずです。しかし、植えて十数年経つとこんな狭い植林地でも、これ程にも成長の差が出てくるのです。この差の生まれる原因には土壌の違い、周囲の雑草障害等いろいろあるのでしょうが、私の見ている限りで最大の違いは日射量です。陽の当るところはやはり格段に成長が早いのです。これを人間に当てはめれば、「成長する環境を与えなければ人は潜在的に持っている最大限の力をもって成長することは出来ない」ということだと思うのです。ＤＮＡが同じあすなろは同じ期間を生きたとしても5倍も成長が違いました。人も周囲が陽の光を当てるように、また丈夫な支柱で支えるように、愛情のある言葉や行動で子供達を導いたなら、10年後の子供の成長はどんなに違うでしょうか。
もともと、個々の人間の能力には差がありますから、成長の差を無くすことは出来ません。これは先の植林で、同じ檜科でも、あすなろと檜はＤＮＡが違いますから同じ環境でも成長に大きな差が出るのと同じで、仕方のないことです。しかし、他人との比較ではなく、その個人のもっている潜在能力を最大に引き出すことが出来る環境を与えてやれば、総ての人はもっともっと成長で出来る（出来ていた）はずです。
環境を与えてやることの出来る周囲の人は沢山居ます。家庭では父、母、祖父母、兄弟姉妹、学校では先生、社会では友人、知人、近隣の人々、会社の上司、同僚等々すべての人は、周囲にいる誰かに良い環境を与えることが出来る立場にいるのです。
あなたは、今日会った子供達に、若者に、成長の糧になる言葉を与えられたでしょうか。 与えられたあなたは今日太陽になることが出来たのです。
