政治家は、日本の未来を語れ

 今回は、日本の政治について私が思っていることを、10年ほど前に書いたものです。ちょうど今、消費税が引き上げられますが、10年ほど前も消費税引き上げがあったようですね。 このころ書いたものを今読んでも、このような変革が日本では必要であり、10年前の状況から日本の現状が進歩したとは言い難いと考えられるため、ここに再び公開したいと思います。 ご意見をたくさん頂けたら幸いと考えております。

 

                                     政治家は、日本の未来を語れ

 今、「消費税率引き上げ」や「道路特定財源暫定税率延長」問題等で、議論がされているが、議論の方向が、今、選挙を行ったら、どちらの主張がより票に結びつくかというレベルでなされているため、真に、国民の心を掴んではいないし、国民の為になる議論にも成っていないと思う。 政治家は、信念をもって国民に、10年後、20年後、はたまた50年後100年後の日本の未来像を示し、国民が夢を描いて目指せるような提案や呼びかけをし、議論していただきたいと思う。

 国民は、今、国がどの方向に向かって進んでいるかが判っているとき、自分の方向を決めることが出来、希望と安心感を持つ事が出来る。逆で有れば、不安と猜疑心が芽生え、愛国心も育たない。

 私が、十数年前、緑の協力隊というボランティア植林活動で、初めて中国へ行ったときガイドの説明の中に、「中国国民は、中国四千年の歴史の中で、今、最も幸せだと思っている。その理由の一番目は、働けば充分に飯が食えるように成ったこと。二番目は、努力と才能次第で、自分の未来を自分で切り開けるように成ったこと。」という一節が有った。 同じ言葉が、先般、ある雑誌の中でのインド人の発言に登場した。インドは今、中国より十数年遅れて、勢い良く経済発展が始まり、自由化や労働環境の流動化が始まっているのであろう。

 経済発展が重要だと言っているのではありません。国民にモチベーションを与え、治安を安定させ、幸福感をもって生活させるには、二つの必要条件があると言っているのです。 一つは、充分な食料を確保出来ること。二つ目は、十年後、二十年後の国の姿を示し、その中で、努力すれば豊かになれるシステムに成っていること。 この二つがあれば、多くの国民は、未来に希望を持ち、幸福感を感じる事が出来るのです。

 今、日本の政治家は、国民に日本の未来像を語りかけているでしょうか。 かつて、高度成長期の初め、首相池田勇人所得倍増計画を打ち出し、「十年後の日本経済を見て下さい、二十年後の日本経済を見て下さい。池田は決して嘘は申しません。」と語りかけました。国民はこの言葉で日本の未来を信じ、モチベーションを高め、経済大国への道を作り続けたのです。

 今や、日本は、食に関しての不足は無くなりました。しかし、本当に十年後の日本の食は充たされているのでしょうか。 政治家は、十年後、二十年後の食糧安保やエネルギー安保を真剣に考えているのでしょうか。日本の政治や経済の方向がどちらへ向かっているのかが判りにくく、自分がどのように努力すれば評価され、成功出来るのかが判りにくく成っていないでしょうか。
 このような状況の中で、日本をどのような方向に持って行くべきか、私見をいくつか述べたいと思う。


■ 食料もエネルギーも自前で70%超を目指す

 日本は飽食の時代であるが、世界全体では増え続ける人口を養う食料増産余地は少ない。いずれ、今起こっている資源争奪戦のごとき、食料争奪戦が始まる。又、石油も石炭も、どう考えてもあと百年はもたない。我々は目覚めて準備しなければならない。次項からこの問題の解決も含んだ、具体的提案を行う。
 今の政治家の考え方では、解決策は出てこない。あえて反対や非難をおそれず、欧米の考え方には無くても、日本の50年後のために、絶対に成し遂げなければならないと言う信念を持って訴えかけ、同志を集め世論を作って行くべきだ。
 自給率70%というのは、海外からの供給が止まったときに、国民が耐えられる最低ラインです。これを確保する政策をうったえる政党がなぜ日本に現れないのでしょうか。


■ 若者に行動力を与える実践教育を!

 日本は、戦争放棄をして以来、軍隊を持たない事になっているので、徴兵制度が無い。軍隊での規律正しい生活様式を若年で経験しておくことは、人生に大いにプラスとなる面が多いと思われるので、徴兵制の無い日本では「奉仕隊入隊制度」を提案する。

 18歳から25歳程度までで2年間、全国で組織された「ボランティア活動隊」のどこかに入隊し、「他人に奉仕する充実感」「自分の体を動かして物を作り出す楽しさ」「人間関係構築の仕方」「規律正しい生活や遵法精神」等々を学びながら、ボランティアを行う事を国民の義務とすべきと思う。

 このような施策は、実践教育を通して社会性のある若者を増やし、日本を活性化するのみならず、副次効果として、若い男女の出会い増加による結婚・出産増や田舎で暮らす若者の増加による地方の活性化が起こると考えられる。


■ 技術開発により、雇用調整と食料・エネルギー安保を両立させよ

 資源を持たざる国日本は、頭脳で資源を作り出すより生き残る道はない。太陽エネルギーは世界中比較的平等に降り注いでいるわけだから、このエネルギーを利用する技術開発で、エネルギーや食料を他国に頼らず調達出来るようにしなければならない。
 まずは、太陽エネルギーを自然が吸収し、炭化物として固定化した植物から石油並のコストで利用できるエネルギーを取り出す技術を確立しなければ成らない。

 微生物発酵や触媒反応でアルコールやメタンガスや水素を作る、炭化して炭として利用する、更にその炭を微粉化して燃焼させる、炭を製鉄還元剤に利用する、こんな技術が開発されれば、森林整備で出てきた雑木や枝葉、除草して廃棄しなければならない草木、解体した家屋廃材、総てがクリーンエネルギーに変わる。

 良いことには、アルコール、メタンガス、水素、炭などはいずれも設備さえ作れば備蓄が出来ることだ。大きなコストをかけて森林から枝葉を集めても石油や石炭のコストより大幅に高くては、またまた国民に税負担を強いることになる。なるべく不況時に、仕事が無い人を使って生産し備蓄すれば、雇用保険生活保護費を払う代わりに森林整備費やエネルギー生産費として払うことで、コストを抑えることが出来る上に、雇用を確保し、森林整備も進み、クリーンエネルギーも備蓄できる。

 好況時は、そのような人が減じるであろうから、備蓄を取り崩して対応する。
 このような施策を採用すれば、雇用調整とエネルギー安保に寄与するばかりでなく、CO2削減に役立ち、開発した技術は世界中に販売することが可能で、技術立国に大いに貢献するはずだ。政府は、予算の無駄やばらまきを排除し、このような技術開発にこそ、集中的に配分すべきと考える。


■ 田舎の崩壊を防げ―――――その1:将来の安全保障を―――――

 日本は、人口減少時代に入った。特に田舎では山村の崩壊が始まっており、ここ十数年で消えていく集落は、激しく増加すると考えられる。
 これらの地区では、山林や里山の所有境界も不明となり、全く管理や利用がされなくなってしまう。私は、これらの土地を、国家が責任を持って未来に利用できる財産として管理すべきと考える。

 具体策として、一番目は「管理できない土地は、国の所有とする」事である。 全国の山村エリアで、現在自分で管理している土地を申告してもらい、それ以外の土地は、国の所有とする法案を整備する。現在の山林や田畑の固定資産税は低額すぎるので、管理して得られる収入に比して合理的な程度に増額すれば、自分で管理していない土地を管理していると嘘の申告する者は少なくなる。
 その土地を管理能力のある希望者に、固定資産税額程度で、有期又は一代限りで賃貸する。 まとまった広大な山林であれば、これを管理運営し収益化する企業が現れるに違いありません。 管理している土地利用の基本は、山林ではその地方に合った雑木林による薪炭等のバイオ燃料生産や木材生産とし、田畑ではトウモロコシやジャガイモ等のバイオ燃料作物とする。これらは、CO2削減に寄与し、又、日本のエネルギー安保に寄与する。 
 又、その田畑はいつでも食料生産に振り向けることが出来るので、食料安保にも寄与する。木材生産は、いずれ輸入出来なくなる南洋材や北洋材に替われるはずだ。

 これらのことを、国直轄でまともに費用をつぎ込むと、膨大な額となるので、先に述べた「ボランティア活動隊」を利用し、人件費を大幅に削減すれば、生産物の価格は、市場価格に近いものとなろう。

 石油も食料も木材も、いつまでも無尽蔵に手に入ると思うな。今のままではいずれ枯渇する。 日本は、日本独自の技術とシステムを開発し、その準備をして置かねばならない。 これは、子孫に対する、私たち現役者の責務であると思う。


■ 田舎の崩壊を防げ―――――その2 カントリータウンで行政コスト低減を―――― 

 今、国も自治体も財源不足から、公共サービスを大きく制限しようとしているが、これは大問題だ。特に田舎の自治体は財政力が弱く、国から見放されれば直ちに崩壊するのは目に見えている。

 崩壊を防ぐ一つの方向は、低コスト自治体とする事だ。
 先ず、山村に集落が点在すると、水道、下水道、道路、通信、電気、郵便といった公共インフラのコストが多大となる。中小自治体は、「もう私たちには、点在する家全部に、平等にサービスを提供する力はありません」と宣言すべきです。 その代わりに100戸~200戸程度の区画割りした造成地を公共事業として造り、一定範囲の地区の人は出来るだけその中に住居を造ってもらい、その中は総ての行政サービスが完璧に受けられる「カントリータウン」を作るのです。 もちろん、その土地は購入していただく訳ですが、公共事業とすれば税金の面でもコストは抑えられ、利益を上乗せする必要がないので、安価な販売が可能です。 購入余力のない人は、超低額アパートとして供給するのです。 100戸~200戸あれば、その中に小さな商店が発生するかも知れません。 又、需要により、マンションやグループホームが出来るかも知れません。
 集中することにより、行政コストは大幅に下がり、又、あたらしい需要や産業が発生します。 点在する元の家は、農業をしている人であれば、その基地や倉庫として、そこまで車で通勤するのです。 このような街を作れば、田舎で不足している嫁問題も解消するでしょう。


■ 都会の崩壊を防げ―――――人間関係希薄化で犯罪や孤独死が増加―――――

 治安の良い国と思われていた日本も、近年は世界の中で最も安全な国の一つとは言えなくなってきている。
 犯罪検挙率低下や凶悪犯罪多発は次第にアメリカに近づいているように思う。特に、天下の悪法「個人情報保護法」が施行されてから、一層人間関係の希薄化が進んだように思える。

 警察行政も、未だに住民と一体で犯罪予防をしようとする意識はなく、組織内だけで方針や対策を決めているため、事態は次第に悪化の方向に進んでいる。 警察よりもはるかに数の多い一般住民の協力無くして、効果的な警察行政など出来るわけがない。

 犯罪予防や一人暮らしの人の事故、孤独死等の解決には、住民相互の協力体制が特に重要だ。 私が住んでいる町内は、自治体活動が非常にうまくいっており、住民参加で協力体制が出来ているので、紹介したいと思う。

 町内は20年程度前に造成されたもので、現在八十数戸あり、それを4班に分けている。各班には一年交替の班長がおり、昨年班長と来年班長の二人が実行委員を務め、一班に計3人の実行委員がいる(班長も実行委員)。執行部と称して、2年交替の会長、副会長、総務、会計が各一人おり、行事や規則改廃、会の方向性、町内の問題解決等の企画を行っており、実行委員がその手助けを行っている。
 町内に3つある公園は、各公園に一人、公園管理委員を置き、緑化や花木の植え付け、施肥、散水等を行い、除草は1回5~6人で4月~10月に月2回、全員持ち回りで順番を決め、行っている。公園管理委員は退職後で比較的時間に余裕があって、庭いじりが好きな人に、期間の定めなく委嘱している。

 このような体制で、毎年新年会や納涼祭を催しているが、参加率がよく、住民の一体感も生まれ、治安にも大きな貢献がなされており、住民手作りで、行政の負担が非常に小さな、良い街作りがなされていると思う。 都会のビジネス街では、このような組織を作るのは無理があると思うが、住宅街では作れるところが多々あると思う。 又、今ある町内会で、殆ど活動出来ていないところ、どうしたらよいか判らないところのモデルになるであろうと思う。
 自治体は、コストの高い職員を沢山雇って自前でサービス体制を組もうと思わず、「もうハイレベルの住民サービスを行うお金がありません」と宣言し、最低の人員で、住民自身の手で自分たちを守る組織作りの支援を行う。 警察は、事件が起こってからあわてて聞き込みに回るのではなく、このような組織と日々交流し、情報を集めておき、危険人物や不審者情報等により、予防対策を立てることが本当に国民の役に立つことであり、住民が安心して住む街を作ることが出来るのだと思う。
 
 このような組織作りを、国、自治体、警察が一体となって進めるために、「住民自治組織推進法」を整備し、本当に安心して暮らせる街を、増税することなく、むしろ、減税して作り上げて頂きたいと思う。

平成20年1月20日

 

 冒頭に記述したように、これは10年以上前に書いたものです。 その間に世界はグローバル化が進み、アジアを中心とする途上国の目覚ましい発展や貿易ルールの変更等、国際情勢は脚光を浴び、変化を続けてきましたが、国内情勢はどうでしょうか?

 少子高齢化はとどまるところをところを知らず、日本の山村・里山は荒廃の一途です。 この状況を問題視し、抜本的な対策を提案する政党も政治家も見られません。

 そもそも、ここに提案した諸案は、民主社会主義を標榜する政党や政治家が提案すべきことですが、日本の政治の歴史を見れば民主社会主義政党であった民社党はあやふや路線で消滅し、次に近い旧社会党は現実無視・時代錯誤の独善路線で消滅寸前です。 

 また近年は、弱小野党ばかりとなったため、弱者連合で数を増やして発言力をつけようと合流を模索しているようですが、政治理念の異なる者が集まっても、烏合の衆をつくるだけで、再分裂必至です。 本当に国民の支持を得ようと思うのであれば、一時の流行みたいな政策ではなく10年後20年後を見据えた本当の意味での民主社会主義国家を目指すべきです。 私が考える日本に必要とする民主社会主義政党の理念は次のようなものです。

①民主主義の原則、「最大多数の最大幸福」を目指すことを堅持する。

②経済は原則「自由経済」を採用し、自由経済で弊害がある場合のみ国等が関与する が、国土の利用計画に関しては国で方針を決定する。 国土利用の大原則は、「管理能力の無い者には所有させない」ということとする。

③「個人の自由」より、「公共の福祉」を優先する。

 日本に是非、健全な「民主社会主義」を標榜する政党が現れ、国民に10年後20年後の姿を提案していただきたいと思う。 その政党が現れた時、日本は本当の二大政党時代に突入するであろうと考えている。