令和の日本列島改造論 その14

                                                        自助・共助・公助

 

 菅前総理が総理の時に「日本をどんな国にしたいか」と聞かれて、「自助・共助・公助の国づくり」と答えたことを記憶されている方も多いと思う。 菅前総理がどんな思いをこめて発言したかはよくわからないが、日本の指針としてこの言葉を使うのであれば国民が理解できるように具体的な形を示す必要があろう。 

 これからの少子高齢化・人口減少の日本にあってすべてのことを公助頼みにできないことは自明のことであるが、それではどんな形で「自助・共助」を進めていけばいいのか、例えば大規模災害時の形、例えば老人介護の形などを国として示す必要があるように思う。 

 

 私見を述べさせてもらえれば、例えば大規模災害時公助を担う地方自治職員等も被災している場合が多く、今までの例でも即時対応は困難で、公助が機能し始めるまでのしばらくの間は、自助で生き残れない人は近隣住民による共助に頼ることとなる。

 このような事態を想定して各自治体は「自主防災組織」づくりを行っており、全国的にかなりな組織率となっているようであるが、名ばかり組織が多く、災害時に機能する組織は僅かであろう。 この組織を機能させるには、常日頃から住民同士意思疎通共同活動の実施が必要であり、活発な活動が出来ている自治会などがつくる防災組織が機能する組織となる。 

 

 このような組織化の例として、一昨年9月に公開した当ブログ「政治家は日本の未来を語れ」内で「都会の崩壊を防げ」と題して私が住んでいる地域の自治会組織を紹介いたしましたが、このように実際活動する組織であればその中で自主防災組織を作っても、きちんと機能するものになるのです。 

 自治共助が機能する組織を作ってもらうためにモデルを提示し、指導員を育成して常日頃から活発な活動が続くようにし、多くの住民が参加する仕組みを作るように誘導することが要となります。 多くの住民は“住民同士の交流が活発でいざという時でも助け合える安心なコミュニティがいい”とは思っていても“どうしていいかわからない” “自分が先頭に立つのはごめん”という意識で自発的にいいコミュニティを作り上げることはなかなか出来ません。 モデルを示して指導し、背中を押すのが行政の役割なのです。 そして共助が機能する地域が災害にも強い強靭な地域となるのです。 

 

 カナダでは、本来行政がやるべきことまで地元住民や自治会にお願いして成果を上げている例があります。

 私は二十数年前カナダを旅行し、バンクーバーからビクトリアまで観光バスで移動しました。 このルートは観光道路となっており、道路沿いの個人宅の家並みも観光資源となっています。 当時のカナダの産業は一番が林業で二番目が観光でしたから、住民は自分たちの生活が観光によって支えられていることを理解し、協力しているのです。 家はカナダらしい洋風の建築で庭は芝生や花壇でカラフルにし、塀は設置せず生垣を設置する場合は車窓から庭が見えるように高さを60cm以下程度にするのです。 

 また、道路には緑地帯が備わっているが、自宅前面緑地帯当該家屋の所有者が花を育て雑草をとって管理するようになっている。 空き家の前面や交差点の緑地は自治体が管理している。 見ていると、住人は非常によく協力しており、殆どの緑地はきれいに整備されており、まれに雑草が繁茂しているところは自治体担当の部分であった。 

 日本でも公道内に緑地帯が有るところは多いが、きれいに管理されているところは少ない。 大半は放置されているか年に1~2回道路管理者が業者に委託して草刈りをしているようであるが、出来るだけ自治会や同好会などに委託して公助共助振り替えることにより美経費削減を両立できることになろう。 

 

 このように意義を説明して理解をしてもらい、協力を依頼することで公助のみに頼ることなく、自助や共助でまかなえる事案は多くあると考えられる。 行政は自助や共助が機能する、持続性があり強靭な国家を作ることを国民に理解してもらうためには、まずその意義と具体的な行動事例ルールを提示することが必要となるのです。