令和の日本列島改造論 その12

                                       景気コントロールに給付金を活用せよ

 

 従来、景気のコントロールには主として日本銀行政策金利の上げ下げで対応していた。 ところが、日本ではバブル崩壊以来好景気が到来せず、金利は下がるところまで下がったままのゼロ金利政策が継続している。 このため金利操作による景気調整景気刺激力を失っており、日本の景気は長期に停滞したままとなっている。

 この状況を改善するため、私は「給付金」を景気コントロールに用いることを提案したい。

 コロナが流行して以来、給付金はかなり多用されているが、日本の場合は現金での給付が殆どで、多くの人は銀行口座に入金したらそのままに据え置いており、消費行動に結びついていない。 であるから、コロナ禍であっても国民の金融資産はどんどん膨らんでいる。

 米国では小切手で支給されるので、もらってそのままにしておくと1年後には換金できなくなるから、銀行で現金化する必要がある。 もともと消費行動に走りやすい米国民は現金を手にすると消費に向かうようで、多くは使われてしまっているようだ。 

 政策金利の自由度が狭まった今、給付金は貴重な景気コントロールツールに見えるが日本のように全国民に振込により平等給付すると多くは銀行預金として眠り、景気刺激効果は限定的であることが明らかとなった。 

 商品券の給付を検討したこともあったが、券の印刷郵送に多額の経費が必要なことから反対論が強く、撤回に至ったこともあったようだ。

 このようなことが起こるのは、すべて起こることを予想した準備が成されていないことに起因する。 いわゆる「泥縄」政策であるからだ。 それでは、何をどのように準備すべきなのでしょうか。 

 個人への給付金を消費に回し、景気を刺激する効果的な方法は二つです。 一つは低所得者に絞って給付することです。 低所得者はもともと、殆ど預貯金が無くお金が有れば使いたい人ばかりです。 多くが消費に向かうことは想像に難くないでしょう。

 もう一つは商品券のように預金化できずに期限内に消費せざるを得ない支給の仕方をすることです。 予めこれが出来るようにしておくことが、準備をしておくということなのです。

 日本では近年個人情報の収集に憶病すぎる傾向が有りますが、このような政策実行に必要なこれくらいの個人情報収集しますと宣言し、今普及に力を入れているマイナンバーカードと紐づけて個人の住所、生年月日、職業、財産、年収、世帯構成などを国が一元管理を行い、税務当局や自治体の課税データなどと連携しておいて都度自動更新するシステムを作り上げておくのです。 このようなデータが有れば、例えば低所得者に絞った給付をする場合でも商品券を郵送する場合でも給付対象者リストは即座に出来上がります。 

 その上で、郵送給付する場合は封筒や商品券に企業の広告を有料で載せ、印刷や郵送に関する経費を吸収するのです。

 広告のスポンサー企業は予め募集しておくのです。 毎年複数社入札で募集しておいて、給付を行う年に落札していた企業の広告を印刷することとするわけです。

 このように余計にかかる経費吸収できる仕組みを採用すれば、給付予算は消費に直結し消費効果も計算できるものとなる。

 給付金は個人のみならず企業に対しても行うことが出来る。 コロナの協力給付金は規模を考慮せず定額だったため小規模事業者は大変潤った反面、大規模事業者は金額に大きな不満を残した。 これも税務当局や自治体、労働政策当局などと連携し売上高、利益額、従業員数、拠点数、等々を把握してそのリストを準備しておけば、その規模に応じた給付額とすることが出来たと思われる。

 給付金は使いすぎると淘汰されるべきゾンビ企業を残す副作用もありますが、コロナのような一過性の、ある特定業種に対する被害には雇用維持効果があり、その後の景気回復に貢献すると考えられます。

 景気刺激のために「消費税を減税すべき」と主張している政治家もいるが、減税はより消費の多い金持ちの方が恩恵を多く受けるわけで、景気刺激には効果的ではない。 国を安定させるには低所得領域にいる国民を少なくし、中所得領域国民割合を増やすことが求められているのであるから、逆に増税して必要時に必要な世帯や業界に給付金を支給する方が景気刺激効果が大きく、国民所得の平準化に貢献するのである。