からだの体験記 その2

               ビールが飲める幸せ

 

 今日は、今まで十数年間飲みたいビールを我慢していた私がビールを飲めるようになったお話です。 老齢男性で私と同じく排尿問題でビールを避けている方も多いのではないかと思います。 原因が前立腺肥大であれば摘出手術を考えて見られたら如何でしょうか。 人生の楽しみが一つ増えると思います。

 

 私は、若い時には酒類の中でビールが圧倒的に好きで、晩酌は必ずビールであった。 なぜビールが好きになったかというと、当時私が飲むことが出来た酒類では圧倒的にビールが美味しかったからです。 私の二十歳前後のころはお酒と言えばビールと日本酒であったが、ビールは品質が概ね一定であったのに対し日本酒の安いものは品質が悪く、臭くてまずいものが多かったのです。 

 貧乏学生だった私は夏休みなどはアルバイトに精を出していたのですが、バイトの中で特に報酬の良い建設現場で働くことがよくありました。 当時は5時に終業すると親方から酒やビールがふるまわれたのです。 汗をかいた後のビールは本当においしく忽ち好きになりましたが、お酒は最も安いものを持ってきていたようで臭くてまずく、忽ち嫌いになりました。 そんな経緯でビール好きになり、晩酌もビールとなった訳です。

 ところが歳をとってくると前立腺肥大症となり、尿の出る勢いが弱くなってきた。 少々勢いが弱くなっただけなら良いのだが、次第に尿の回数も多くなり、ビールを飲んで就寝すると夜中には1時間ごとにトイレへ行かねばならなくなった。 あまりに回数が多くなったためにトイレへ行くのを我慢すると、今度はトイレへ行ってもなかなか尿が出ないのです。 排尿に10分以上かかることが多くなってしまった。 仕方なく、尿意がしたらすぐにトイレへ行くようにしていたから、どこへ行ってもトイレがどこにあるか探してから行動するようになっていた。 

 そんな状況であるので、54~55歳位から晩酌のビールはやめておくことにした。 しかし晩酌はしたいので、好きではなかった日本酒を好きになろうと決めた。 

 嫌いな食べ物を好きになるには嫌いになった原因行動と逆を行えばいいのです。 食べ物を嫌いになる原因の多くは最初にその食べ物を最もおいしい状態で食べなかったことです。 私も最初に最もおいしい日本酒を飲んでいれば日本酒が好きになったのでしょうが、残念ながら最も不味いものを最初に飲んでしまったのでした。 そこで大きい酒屋で利き酒をさせてもらったり、酒蔵を訪ねて美味しそうなものを探して飲んでみたりと美味しい酒を飲んで脳に「酒は美味しい」という刷り込みをする行動を始めたのです。 

 これは効果抜群でいい酒は酒臭さがなくまろやかなのです。 そのいい酒の中でも自分の舌に合うものを探して飲みだして、日本酒好きになったのでした。 日本酒が好きになってしまえば高い酒は毎日飲むと費用が大変なので、そこそこの価格帯で自分の舌に合うものを探して毎日の晩酌用にしていったのでした。

 

 ところが当ブログの「からだの体験記」に詳しく書いたように、ある日に排尿困難となり、原因は前立腺肥大症だということで、昨年11月に前立腺摘出手術を行った。 

 手術の効果はてきめんで、排尿困難はうそのように無くなり、勢いよく排尿出来るようになった。 頻尿は少し残っていたので、薬を処方してもらうと同時に排尿を我慢する訓練を続けた結果、今では頻尿も大きく改善され排尿による生活制限はほぼ解消された。 

 この経験から、前立腺摘出手術とその後のケアについて同病の男性諸君に参考になる情報を提供したいと思う。

その1 手術は最新設備が整った病院で、経験豊富な医師に執刀してもらう

  通常、病気の初期はいきなり大病院には行かず開業医に行くものだが、手術となれば大病院に紹介状をかいてもらうと思う。 この時に紹介してもらう病院の設備や実績をよく聞き、紹介先を決めるようにする。 病院はどこも同じではない。

その2 手術後はリハビリを徹底する

 前立腺摘出手術は短期間入院なので筋力の衰えは少ないが、それでも早期に回復し元よりも数段良い状況の体にするにはリハビリが欠かせない。 手術の傷に影響のないように医師の指示を仰ぎ、出来る運動からはじめて筋力を強化する。 この手術後は尿が出易くなるので少し踏ん張っただけでも尿漏れを起こすことが多い。 これを解消するのは排尿筋周りの筋力強化しかない。 私はスクワットに肛門括約筋運動をプラスした運動や開脚で前屈する運動など骨盤底筋を鍛える運動を朝晩欠かさず実行した。 この結果半年ほどで尿漏れは完全に克服できた。

 

 排尿困難が解消されたので、今夏は再びビールを晩酌に取り入れてみた。 夜間に1回は排尿のために起きてトイレへ行く必要があるが、以前のように1時間ごとという状況にはならず、普通に睡眠がとれる状況である。 今年は特に毎日暑いので、晩酌の最初はキンキンに冷やした缶ビールを1本楽しみながら嗜んでいる。

 風呂上がりに飲む晩酌ビールの一口目のおいしさは格別で、人生これ以上の幸福はない。 「今日1日の頑張りはすべてこの一杯のためにある」と思える一瞬である。

 

 人生の中で幸福な状態しか知らなければ、今自分が幸福であると感じることは出来ません。 暑い日にもビールを我慢せざるを得ない状況から脱出できた私は一杯のビールにより、より大きな幸福を感じることが出来るようになりました。 私たちは「昨日よりもより良い今日」を手に入れられた時、大きな幸福を感じることが出来るのです。 今、幸福を感じられずに生きている人は、少しだけの努力行動を行うことで「昨日よりもよくなった今日の私」を感じることが出来れば、大きな幸福感を味わうことが出来ることでしょう。