令和の日本列島改造論 その5

                                      事業損失補填積立金制度の創設を

 今回の提案は10年ほど前の民主党政権時代に、民主党関係者に話をしていた内容です。 民主党はご存じのように、国民に改革を期待されながら「有能で徳のある」リーダーに恵まれず、期待外れのまま消滅したことは記憶に新しいと思います。 かの時代に今般の提案が採用されていたとしたら、今まさに進行中の新型コロナによる日本経済大沈没の危機を大きく緩和できたことでしょう。 

 提案内容は、下記のようなことです。 

企業永続景気変動緩和のために-―――事業損失補填積立金制度の創設を

企業業績は、好不況の波により大幅な利益が出たり、はたまた赤字になったりと、繰り返すのが常である。この利益変動を少なくするのは、経営者の苦心するところである。特に赤字決算であると、銀行融資が止まったり、金利が高くなったりと、さらに業績を悪化させる要因となる。これを防止するため、利益が出たときは、その利益の20%程度を上限として、国家が関与する機関に基金として積み立てが可能とし、これを経費として損金計上できるようにする。そうすれば、その年度の利益は20%圧縮される。利益の少ない年や赤字の年には、その基金から取り崩して、所得として計上出来るようにする。そうすれば、その年の利益金額が増え、決算内容も赤字を回避出来、キャッシュフローも改善する。必要に応じ、基金から積立額程度の貸し付けも可能とするが、貸し付けの場合は金利を付す。
基金の積立金には金利を付けずに、この金利分で基金を運営する。
このようにすれば、好況の時と不況の時の利益落差が解消し、経営者は安心して投資も出来るようになる。税収は若干減少するかも知れないが、好不況による税収差はかなり小さくなり、予定より大幅に税収が落ち込み、あわてることも少なくなるはずだ。 本気で日本経済の強靭化を考えるなら、本制度を一定の規模・経過年数の企業に義務化するのが理想であると思う。

効果
・ 好不況の波を小さくすることが出来、安定した設備投資計画が可能となる。
雇用の安定に寄与する。
・ 従業員の賞与等を含めた年収の安定に寄与する為、個人消費の極端な落ち込みを防ぎ、景気変動を小さくする。
税収が安定するため、好況時の過剰な税収を元にした予算計画を立てなくなる。

  今回の新型コロナは終息の気配が見えず、この先日本経済のみならず、世界経済がどうなるのか、まったく予断を許しません。 あと、半年このような状況が続けば、まず観光関連(旅館・ホテル・民宿・旅行業者・バス・タクシー・鉄道・客船・航空会社・ガイド業・アミューズメントパーク・等々)、外食・小売り関連(レストラン・バー・キャバレー・クラブ・居酒屋・デパート・スーパー・物産店・雑貨店等々)、娯楽関連(パチンコ・麻雀・カラオケ・ディスコ・ライブハウス・等々)の体力が尽き、雇用が不安定化するため大型消費が落ち込む。 また、外出自粛の影響で一般消費食料品以外大きく落ち込むこととなる。 この結果、大型消費の代表である住宅産業・自動車産業大打撃を受けることとなり、この部品・部材供給を担っていいる製造業全体雇用継続や事業存続の危機が訪れる可能性がある。 

 政府は体力の乏しい個人事業者や中小企業を中心に、助成金や給付金を計画しているようであるが、まさに付け焼刃であり、膨大なバラマキはいずれ国民一人一人が税という形で徴収されることとなる。

 今回の新型コロナパンデミック以前にも、世界では何回もパンデミックは発生している。 過去のパンデミック時は、現在ほど人の動きがグローバル化していなかったため抑え込めた例が多かったのであるが、これからはますますグローバルに人が動き回り、特に中国・インド・インドネシア・アフリカ諸国等の発生時抑え込み能力が不足している開発途上国の動く人が多くなるので、定期的なパンデミックは起こる前提で国や国際機関は対応を考えておくべきである。

 パンデミック以外でも、東日本大震災を見ても、また将来予測されている東南海地震、富士山噴火等の大災害時は、社会インフラの破壊で事業継続ができない企業が続出する。

 今回提案する「事業損失補填積立金制度」はその時の経済対応の一つとして、非常に有効に機能すると思う。 現在でも「中小企業倒産防止共済」があるがこれは取引先が倒産したときのみ機能するものであり、民間の利益補償保険類は担保範囲が限定される上、自社利益や代理店手数料が大きいので掛け金が大きいわりに還元が小さい。

 それでは、毎年利益を積み立てできる企業以外はどうしたらいいのでしょうか。 「企業経営のお話その1」で書いたように、企業の目的は「永続する」ことです。 特別のことがない限り、ほぼ毎年利益を計上できない企業は、もともとその事業モデル社会で存続できるものではないということなのです。 社会で存続できない企業はパンデミックがなくてもいずれ淘汰されるゾンビ企業ですから、消滅が早くなっただけのことなのです。

 国は、新型コロナ騒動が終息したら「のど元過ぎれば熱さを忘れる」とならないように、次のパンデミックに対する対応をしてもらいたいと思う。