地球環境の提案(その4)

                                                     中国沙漠緑化のお話

 地球環境の提案(その3)で書いたように、私は1997年頃から中国内陸部に沙漠緑化活動で十数回、植林ボランティアに行ってきました。 この時、沙漠とはどういうものか、少し知見が増えましたので、書いてみたいと思います。
 沙漠とはふつう砂漠と書きますが、私たちは沙漠と表記していました。 これは世界の沙漠地帯というのは、砂が広がっているところを言うのではなく、水が少ないところを言うのだという、定義に基づいています。 実際、私が植林にいったところは、内モンゴルクブチ砂漠にある恩格貝というところと、西安に近い黄土高原劉家峡というところです。 
クブチ砂漠は日本人の多くがイメージする砂漠で、細かい乾燥した砂地盤が広がり、表面は手でも容易に掘ることができるほどさらさらの砂ですが、黄土高原粘土質地盤で表面は結構固まっています。

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 クブチ沙漠での植林は、新疆ポプラの苗を植えました。 苗を植えると分かるのですが、沙漠は表層30cm程度はさらさらの乾いた砂ですが、それ以深湿った砂となっています。 十数メートル掘ると地下水もあるそうです。 だから、井戸を掘れば水は確保できるのですが、かの地の人々は井戸を掘る知見を持たず、井戸は外部からの資金と技術の支援で掘るのですから、そうたくさんは確保できません。 我々が訪れたところにも井戸はありませんでした。 
 なぜポプラ苗かというと、ポプラは1年で1m以上も成長するからです。 沙漠では表層の砂が強風で移動します。 風で高さ30mもある山もできるそうです。 そしてその山が一晩で10m以上も移動することが有るそうです。 かように沙漠では、表層の砂が動き回り低い植物は埋まってしまって翌年芽を出すことが出来なくなることが多いそうです。 ポプラ苗であれば地上1m出して苗を植えれば、その年の秋には2m程度まで成長します。 砂で埋まってもわずかでも頭を出していれば、次の年にはまた1m伸びて成長を続けるのです。
 このポプラ苗を、深さ60cm程掘った穴にバケツ1杯の水をやって、植え付けるのです。  

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 ポプラは活着し易く、8割くらいは育ちます。 7~8年もすれば、ポプラ林ができます。             

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 ポプラの林は、林と林の間を30mくらい離して作ります。 ポプラの林が完成すると風が遮られるため砂の移動が止まり畑を作ることが出来ます。 林のないところで畑を作っても、作物は風が吹けば一晩で砂の下です。 植林は、耕作可能地を作ることにも繋がっているのです。 
 内モンゴルの人たちは、遊牧で生活している人が多く住居が定まっておらず、家畜のえさがあるところへの移動を繰り返していますが、耕作可能地ができると周辺から人が集まってきます。 耕作により食料が手に入るようになると、すぐに村ができるのです。 村ができると行政は幼稚園や小学校をつくり、教育ができるようになります。 耕作地ができ、定住するのは住民の夢なのです。
 ただ、作物を作るのに必要な雨があまり降らないので、灌水は大変です。 中国の少雨地帯の農業は畑であっても田圃のように水を保持できる構造とし、週1回位かんがい用水から水を引き入れて全体を水没させるくらいに灌水し、あとは植物に枯れないように頑張ってもらうやりかたが多いそうです。 しかし、このやり方では灌漑水の蒸発により地表面が次第に塩化し、数年すると塩害が発生して収穫が激減するそうです。 日本のような多雨地帯の畑は灌水も少なく、また表層に降った雨が地下浸透する際にミネラル分を連れて行ってしまうので、塩化しないのです。 
 そこで、私が提案するのは点滴灌漑農法です。 点滴灌漑というのは、栽培植物の根元に細いパイプを配管し、必要な時にピンポイントで給水する方法です。 
  

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 写真は点滴灌漑パイプを露出で敷設してあるものですが、沙漠であればパイプを表層より10cm程度の深さに埋めて給水し、表層蒸発をなくすれば蒸発による塩化はなくなります。 使用水量も数十分の一に減じると思います。 必要時に肥料分を混合することにより、施肥の手間も減じることが可能であろうと思います。 日本の優れた技術と知見で、アジアやアフリカの発展途上国農業を改革することにこそ、ODA予算を使ってほしいと思っています。

 長くなりましたので、続きは次回に書いていきたいと思います。