からだの体験記 その3

                                 歯の健康話―――――インプラント治療のお話

 

 皆さんは食事の時よく噛んで食べていますか。 よく噛んで食べることは健康の基本で子供の頃「1階口に入れたら30回は噛んで食べなさい」と母親にしつこく言われ続けたので私は本当によく噛んで食べます。 だから食事は他人よりかなり時間がかかります。 そのおかげか75歳の今も元気で仕事が出来ているので親に感謝です! よく噛んで食べるためには歯の健康が不可欠です。 

 私は70歳まで永久歯を抜いたことがなく歯が全部有ることが自慢でしたが、虫歯は何か所か治療をしてあり特に70歳前後には左下奥歯2本が虫歯の為短くなってしまいました。 結果、食べ物を噛むのは右側奥歯中心となっていましたが今度は右下奥歯の1本がぐらついてきました。 そこで行きつけの歯医者に「奥歯が左右とも噛めなくなったら都合が悪いので、今ぐらついている1本をインプラントにしたい」と伝えると「あなたのあごの骨の状態ではインプラントは入れられない」というのです。 「それではこの歯が抜けたらどうするのですか」と聞くと「抜けたままでも食事出来るでしょう」とのことで、入れ歯の提案もありませんでした。 

 それでは都合が悪いと思った私は「東京ならインプラントを入れてくれる歯医者がいるかもしれない」と思いインターネットで探したところインプラント実績が多く技術水準も高そうな歯医者が3軒見つかりました。 そのうちの一つに電話をして相談すると「来店して見せてもらわないと確実なことは言えないが多分大丈夫でしょう」とのことで、早速東京まで出かけたのです。 

 歯の透視画像を見て歯科医の先生は、「長期間歯がぐらついたまま使っていたので根元の骨がやられ、抜いたところが大きな穴になる。 この穴を埋めないとインプラント人工歯根が埋められない」と言われました。 インプラントの構造は下図のような形です。



 この人工歯根を埋め込む部分の骨が穴になっているようです。 この穴を埋める方法としては自分の血液を採取しそれに人口骨の粉を混ぜて薄いシートを作りそれを穴の表面に張り付けるとシートは骨と一体化し、これを何回か繰り返して穴を埋めていくそうです。 この穴埋めだけでも東京の歯医者に7~8回は通う必要が有るようです。 

 時間とお金がかなりかかりますが、どうしてもインプラントを入れたい私はこの治療を受けてインプラントを入れることとしました。 先ず歯を抜いて根元の骨の痛んでいる部分を削り取って正常な骨の表面を出しました。 しばらくこの状態で骨の穴埋め治療をしなければならないので、この部分に仮の歯を入れて噛みやすくして保護も兼ねるのです。 次回からシートを作って穴を埋めていく治療に入る予定でしたが、このころにコロナが流行し出し横浜港にコロナ患者を載せた豪華客船が入港しました。 

 東京へ行くのはやばいと思った私は予約を1か月ほど延期しました。 ところがそれからコロナは収束するどころかどんどん広がって来ました。 3回くらい延期を繰返していましたが収束する様子が見られないので、収束するまで治療は見合わせることにしたのです。 1年くらいで収束するかと思っていましたが世界中に広がるばかりで、3年たっても収束はしませんでしたが多くの人が免疫を持ったため重症化するリスクが低下し、感染症法の分類も2類から5類と変わりました。 また旅行などの移動制限もなくなったので3年ぶりで治療を再開することとしました。 

 3年ぶりに東京の歯科医を訪問して先ず骨の透視写真を撮りました。 すると先生は「歯を抜いたあとの大きな穴が小さくなっている。 3年もたったから自分で埋めたようだな」と言われました。 考えてみれば骨折しても骨と骨の間の隙間は自分で埋めて骨はくっつきます。 骨は削られても元の形に自分の力で復元するようです。 コロナの3年間で私の歯茎の骨は治療せずとも自力で復元したのです。 歯を抜いたあとの大きな穴を埋めるために7~8回東京に通う必要がなくなり、次回早速人工歯根を埋め込む治療を行うこととなりました。 

 インプラント治療といっても一応骨に穴をあける手術ですから術後に何かあってもいけないので医院近くのホテルで1泊し、次の日も医院で術後経過を確認してから帰ることとなるのです。 手術は局部麻酔と精神を安定させるガスを吸引したうえで行うもので、私はそのまま眠ってしまって目が覚めたら手術は終わっていました。

 人工歯根が入ったら直ぐに歯が付くのかと思っていたら大間違いでした。 人工歯根周りの骨が人工歯根との隙間を埋め一体になるのに最低4か月はかかるとのことで、しばらくは仮の歯も無しになってしまいました。 現在は人工歯根だけで仮の歯が付いていないので食べ物をかみ砕きにくくて食事に時間がかかっています。 2か月に1回程度通院して安定したら歯を取り付けて完成のようです。

 完成して終わりかと思っていたらそうではありませんでした。 定期的にインプラントを取り外してクリーニングする必要が有るということです。 最初は年4回クリーニングの為通院するように言われました。 いくら何でも数十分で終わるであろうインプラントのクリーニングに年4回も東京に行くのは勘弁してほしいと言ったら、年2回でいいことになりました。 年2回位なら色々な用事を兼ねて東京の空気を吸いに行くのも悪くないと思い了承しました。 インプラント治療というのは結構ランニングコストもかかることが判明いたしました。 これから歯の治療をするのにインプラントを考えている人はこの私の経験を是非参考にしてください。